石原都政が原因だった!?  かつて隆盛を誇った「デコトラ」が激減したワケ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■全盛時に比べるとデコトラはかなり減少している

■当時の石原都知事の違法ディーゼル車一掃作戦もその一因

■それ以外にも多方面からデコトラが存在しにくい環境になったことも原因

デコトラの多くは「ヒストリックカー」がゆえに環境対応できず!

 1975〜79年にかけて上映され、大ヒットを博した映画『トラック野郎』で一躍火がつき、80〜90年代には一大ブームを博したデコトラ(デコレーショントラック)。アートトラックとも呼ばれるこれらギラギラした電飾やメッキパーツ、そしてペイントで車体を飾り立てたトラックは、「街道の華」として、現役トラッカーのみならず、子どもたちにも熱狂的な人気を集めていた。

 そんなデコトラが近年、減少の一途をたどっている。近年の荷主や納品先の企業のコンプライアンス意識の高まりや、純正フロントバンパーにヘッドライトを内蔵するバンパーライト車の普及により、トラックを「飾りにくい」現状になっていることが要因だ。しかしもうひとつ大きな節目となった出来事もその一因だろう。昨年他界した石原慎太郎氏が東京都知事時代に推し進めたディーゼル車排気ガス規制も大きく影響しているのだ。

 石原都知事(当時)は2001年4月に「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)」を施行。2003年10月から粒子状物質(PM)排出基準を満たさないディーゼル車を都内で走行させない「違法ディーゼル車一掃作戦」を開始した。それに続き、神奈川県/千葉県/埼玉県も同様の条例を制定した。また国でも2007年にNOx法(自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)を改正。規制対象物質にPMが加えられNOx・PM法になり、東京都/神奈川県/千葉県/埼玉県/愛知県/三重県/大阪府/兵庫県各府県の一部にてNOx・PMの排出基準を満たさないディーゼル車の新規登録および移転登録ができなくなった。つまり同地域での車検が通らなくなったのだ。

 NOx・PMの排出基準を満たさないディーゼル車というのは、イコール低年式、旧型のトラックということ。これにより、都市部を走る、都市部で働くこれらのトラックはすべて地方または国外に追われるか、処分される結果となった。とりわけデコトラは、オーナーが長年の期間をかけて手をかけてきた歴史のあるクルマばかりなので(古い車輌を長年かけて飾ったり大事にしているので)、多くの車輌がこれらに該当したわけだ。

 低年式のトラックもマフラーやDPF(ディーゼル粒子フィルター)などの対策部品を装着すれば、その問題を解決することは可能だが、それには高額なコストがかかってしまう。

 車輌総重量1.7トン以下/1.7トン超2.5トン以下/2.5トン超3.5トン以下のトラック・バス(ディーゼル車)は平成17年規制適合車以前のモデル、3.5トン超の車輌は平成10年規制適合車以前のモデルが規制対象となる。NOx・PMの排出基準を満たす高年式の車輌には写真のようなDPF(ディーゼル粒子フィルター)が標準装備されている。

「低年式のトラックに対策部品を装着し、都市部でも使えるようにするには、最低でも130万円からの費用がかかってしまいます。それも現状排出しているNox・PMの数値が高ければ高いほど、対策部品の金額は高くなります。それならばいっそのことクルマごと買い替えてしまおう、と多くの働くトラッカーたちは泣く泣く愛車を乗り換えたわけですね」と、長年にわたり首都圏で運送会社を営むある社長が話してくれた。そんなトラッカーのなかにはこれまで乗っていたデコトラをプライベート車として残したうえで仕事車として高年式のトラックを購入し、あまり飾らずに乗っている人もいる。ただ、それはNOx・PM法の対象都府県外に在住し、トラックを複数台所有できるオーナーにしかできないことだが。

 Nox・PMの排出基準を満たさない低年式のトラックでも、DPFやマフラーなどの対策部品を装着し、車検をクリアすれば都市部での所有や通貨も可能になる。写真の日野スーパードルフィンはオーナーがこの車輌で仕事を続けるために、高いコストと労力をかけて排出基準をクリアさせた車輌だ。


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