トラック業界は必ずしも歓迎せず! トラックの高速の制限速度を80→100km/hに引き上げる案への声 (2/2ページ)

「荷物を捌ききれないから」で制限速度を引き上げていいのか?

 しかしながら、運輸業者のなかには、この制限速度引き上げを歓迎しているところばかりではなさそうだ。そもそも大きく重い大型トラックやトレーラーが事故を起こすと、その運動エネルギーの大きさから衝撃力が凄まじく、被害が甚大になる。それゆえ、制限速度を80km/hに落としたのに、「荷物を捌ききれないから」という理由で、制限速度を引き上げていいのだろうか?

 制限速度を引き上げると走行中のタイヤバーストなどの危険性も高まることから、ドライバーの安全面に支障が出る可能性もある。それに、現在の高速道路の交通量の多さから考えれば、制限速度を引き上げても平均車速はそこまで上昇することは考えにくい。高速道路でも上り坂や低速車両の追い越しなど速度が上下するシーンはいくつもあり、遅いクルマに引っかかったり、上り坂で速度が低下したあとに加速して100km/hにまで到達するのには、乗用車よりかなり時間がかかるからだ。

 それに走行速度が3割上昇すれば、それに伴って燃費も悪化する。高速道路を走行中の車両では空気抵抗がもっとも大きな損失であり、空気抵抗は速度の二乗に比例して増加する。荷物の扱い量が増えても燃料代が嵩んでしまえば、利益はなかなか増えてはくれない。

 現場のことなど何も知らない役人が考えても、実効性のある施策など構築できる訳がない。1日助手でも勤め、物流の仕事の過酷さ、運送業の大変さを知ってこそ、本当の問題に気付くだろう。

 大型トラックの制限速度が高まれば周囲を走る乗用車のドライバーは、トラック同士の追い越しのモタつきから解消されると思っているのかもしれない。しかし、前述のように平均車速はわずかに上がる程度かもしれないし、いまの大型トラックが高速道路上を占める割合は変わらないのだから、それほど改善することはなさそうだ。


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