複数の社長交代など話題が豊富な2023年の自動車業界! 大事件で幕を引いたが2024年はダイハツの再起に注目 (2/2ページ)

2024年はダイハツの再起に注目

 また、元祖プラグインハイブリッドカーブランドとして認知される三菱自動車は、2023年秋に開催されたジャパンモビリティショーにおいて、次期「デリカ」を思わせるプラグインハイブリッドのコンセプトカーを展示していた。今後、国産プラグインハイブリッドカーの選択肢が増えることを期待したい。

 とはいえ、実質的に日本の国民車となっている軽自動車においては、プラグインハイブリッドというメカニズムの採用は難しいといえる。

 EVであれば駆動用モーター&バッテリーとインバーターなどを積めば成立するが、プラグインハイブリッドにはエンジンと発電用モーター、燃料タンクを追加する必要がある。EV仕様に対してバッテリー搭載量を減らしたぶんで、エンジンなどのコストを賄える車格であればプラグインハイブリッドの“コスパ”はよくなるが、軽自動車のようなコンパクトカーはひと足飛びにEVシフトするほうが合理的という見方が主流だ。

 前述したジャパンモビリティショーでは、スズキが未来のハスラーを思わせる軽EVのコンセプトカーを展示、軽自動車のEVシフトを予感させた。

 もっとも現実は異なる。三菱デリカミニ、ホンダN-BOX、スズキ・スペーシアと2023年に相次いで登場した魅力的な軽スーパーハイトワゴンは、どれもエンジンを積んでいる。デリカミニとスペーシアはマイルドハイブリッドのパワートレインとなっているが、N-BOXは、いまだに純エンジン車だったりするのだ。

 ちなみに2023年の平均気温は、1度以上上昇したという。

 地球温暖化・気候変動を実感するなかで、ゼロエミッションのEVが普及することは必須と感じる一方で、どうしてもコスト高になってしまうEVへの乗り換えは庶民の懐事情からすると厳しいという実態を、日本の国民車である軽スーパーハイトワゴンは示しているといえるのかもしれない。

 そうした状況を大きく変えるのが2024年という見方もできるだろう。

 前述したBYDの日本進出によりEVの価格破壊が必然となってくることで、小さなEVが手ごろな価格となることも期待できるが、やはりキープレーヤーとなるのはダイハツだ。

 冒頭で記したダイハツの不正は、ブランド価値を大きく毀損するもので、今回の報道を見た多くのユーザーには、ダイハツ車を積極的に選ぼうというインセンティブがなくなっているだろう。ダイハツにはブランドの再構築が必要となる。

 過去に学ぶとすれば、「ディーゼルゲート」と呼ばれたディーゼルエンジン関連の不正でイメージを落としたフォルクスワーゲンは、EVシフトをすることでリブランディングを進めていることは、ダイハツの行く先を予想する上でヒントになる。

 執筆時点では、ダイハツはすべての生産を停止しており、再開の目途はたっていない。国土交通省の調査結果次第では、生産再開となるかもしれないが、最悪のケースでは型式指定の取消(事実上生産不可能になる)になる可能性もある。まったく予想がつかない状況だ。

 仮に型式指定を取り消されてしまった場合、クルマを量産するには新規に型式指定を申請する必要がある。ダイハツのメイン商品である軽自動車やコンパクトカーにおいても将来的な電動化、ゼロエミッション化は避けられないとすれば、これを機にラインアップのEV化を進めるというのは、リブランディングにもつながる手となるだろう。

 もし、ダイハツが軽自動車のEVシフトを一気に進めて、従来からのユーザーが買える価格帯の軽EVを続々と登場させることができれば、日本の自動車マーケットが大きく変わるきっかけになることは間違いない。

 たしかに日本のエネルギーミックス的には性急なEVシフトは、CO2削減にはつながらないかもしれない。とはいえ、2050年には日本のカーボンニュートラル化を実現することは国家的目標だ。2050年のギリギリまでエンジン車が存在、燃料インフラを維持したまま、ある日突然ゼロエミッションになるという未来は現実的ではなく、徐々に化石燃料を使わない社会に変化していくと予想される。

 その点からも、ダイハツがブランド再構築としてゼロエミッションのモビリティメーカーへと変身するということは意味があると思う。

 もちろん、ダイハツの不正は個社の問題ではない。2023年には中古車販売や損害保険といった自動車ユーザーに関わるさまざまな企業において問題や課題が頻出した。ユーザーの不信感は自動車業界全体に及んでいるというのが事実だろう。

 生産・販売を問わず、業界全体としてユーザーから信頼されるような変化が必要となるだろう。海外からの進出もある現状において、信頼回復ができなければ、日本の自動車業界は大きく衰退してしまうかもしれない。2024年は日本の自動車メーカーにとって自国マーケットにおける正念場となることは間違いない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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