2023年は自動車業界にとって良くも悪くも「スクラップ&ビルド」の年だった

この記事をまとめると

■本誌レギュラーライター陣が2023年の自動車業界を振り返る企画

■まるも亜希子さんはジャパンモビリティショーが飛躍に向けての一歩と考えている

■ビッグモーターとダイハツの問題は組織のあり方を見直す必要がある

ジャパンモビリティショーは自動車業界の飛躍の象徴

 WBCで侍ジャパンの劇的な勝利にはじまり、将棋の藤井聡太竜王が史上初の八冠を達成、甲子園では慶應が107年ぶりに優勝するなど、スポーツ界はビッグニュースに沸いた2023年でしたが、自動車業界では良いことばかりとはいきませんでした。良くも悪くも、長く続いた慣習のようなものが壊れ、または意図的に壊し、再生や飛躍に向けての一歩を踏み出した、そんな2023年の自動車業界だったと感じます。

 そのもっとも顕著なものが、東京モーターショーから名称も内容も大きく変わった、ジャパンモビリティショー。自動車メディアでは当初、「こんなに大変身させちゃって大丈夫なのか?」という不安もよぎっていたものでした。でも蓋を開けてみれば、クルマではなくモビリティという多様性のあるもの、生活に身近なものへ範囲を広げたことで、子どもからお年寄りまで、免許を持っていなくても、クルマを買える環境になくても、どこかで自分ごととして捉えることができ、楽しめるショーへと飛躍したと感じています。

 実際に、これまで20年以上モーターショーの取材をしていますが、クルマにはまったく興味のないママ友から「行ってきたよ!」と声をかけられたのは初めてのこと。すごく混んでたけど、楽しかったという感想を聞いて、大きな希望が湧いてきたのでした。

 そして、残念な出来事が2件。中古車業界大手のビッグモーターとダイハツによる問題は、長く続けられてきた悪い慣習がおおやけになり、中古車販売現場や自動車開発現場の負の一面がクローズアップされました。なぜ起こってしまったのか、どうやったら再発を防ぐことができるのか、もう一度、根幹から改革をおこなって、ユーザーに信頼されるようなものに再生していくことが急務ではないでしょうか。

 ですがここで、私は実際に不正に踏み切った現場の人だけが悪いとは思いません。自分の立場を守るために、無理難題を部下に押し付けてなんとしても遂行させ、手柄を自分の利益とするのは、上に立つ資格のない人です。そのような人たちがいちばん反省し、改心して風通しのよい開発現場、嘘偽りのないコミュニケーションができるシステムを構築しなければ、また同じことが起こってしまうでしょう。

 自動車業界がこれから大切にすべきは、成長よりも協調、利益よりも倫理だと考えます。そんな悠長なことを言ってると、世界の競争から置いてけぼりをくらうと言う意見もあると思いますが、いくら競争に勝ったとしてもその後でユーザーの信頼を失ったら、それこそ終わりです。誠心誠意、心を込めていいものを作る。日本のものづくり、おもてなし、その基本をあらためてなぞり、2024年は自動車業界にとって素晴らしい年になりますように!


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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