こちらに過失はなくとも事故自体に巻き込まれたくない……タクシーやバス運転士が心掛ける「防衛運転」とは (2/2ページ)

たとえばこちらが優先でも相手が止まらない可能性を考慮

 たとえば、信号のない交差点で相手方のほうに一時停止義務があるとする。たまたま交差点で出合い頭になりそうだというシチュエーションとなると、「こっちが優先」というのは確かなのだが、相手がしっかり一時停止するかを見極めることも防衛運転ということになる。「相手が一時停止を無視して交差点に進入してくるかもしれない」と思いながら運転するだけでも、何も意識しない時とは心構えがあるだけ事故回避の可能性がより高まってくるともいえよう。

 そして様子を見て「このクルマは一時停止を無視しそうだ」と思ったら、相手を先に行かせるように減速するなどして事故回避を心がけるというのも、いまの状況で身を守るという観点でみると一考すべきかと思う。

 煽り運転は相手方の勝手な思い込みなど、煽り運転を「される側」はその理由がわからない(それが理由とは思えなかった)のが一般的なように見える。ただ、バックミラーなども駆使して、自分のクルマの周囲で違和感を覚えるような運転をしているクルマが走っていれば警戒するというのも「防衛運転」といえるだろう(なんとなく雰囲気で「これは」とわかることも多い)。

 多様性が叫ばれる世の中、その傾向は何も良いことばかりではない。可能な限り事故を防ぐために法令順守はともかく、マナー、モラルというものを重んじてクルマを運転するのだが、法令順守ひとつとっても、その受け止め方には個人差が出ているのが現状(だからこそ平気で飲酒運転する人もいる)。

 アメリカでは「午後9時過ぎは道を走るクルマのかなりの数は飲酒運転状態だから気をつけろ」と言われたことがある。もちろん日本とは異なり、一定量まで飲酒しても運転して構わないのだが、事故発生リスクが高まっていると自覚して運転しろと警告してくれたのである。これも防衛運転のひとつと考えていいだろう。あくまで都市伝説だが、治安の悪い地域では意図的にクルマをぶつけてきて停車させ、相手方がクルマから降りたところで強盗をはたらくこともあるとのこと。そのためぶつけられても治安のいい場所まで停まらずに逃げないと、実際強盗の被害にあっても警察の対応が冷たいこともあるとの話も聞いたことがあるが、これはまた特殊な一例といえるだろう。

 悪を黙認しろとはいわない。しかし、善悪を優先したばかりにいらぬトラブルに遭うのならば、そして「このままではトラブルが発生しそうだ」と判断できた時は、許容できる範囲でそのトラブルを回避する「防衛運転」を心がけるのも、いまの交通環境を考えると全否定すべきものでもないと考える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

-

愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

新着情報