原付免許で125ccに乗れる……と喜ぶのはちょっと待て! いま売ってる125ccには乗れない「新基準原付」はユーザーメリット「ほぼゼロ」の改正だった (2/2ページ)

理由はクルマの世界と同様に環境対策

 こうした新基準原付が求められる背景には厳しくなる排ガス規制がある。

 一般論として排ガス規制をクリアするにはエンジン本体での燃焼制御とキャタライザーを軸とした排気側での処理が必要となる。いずれにしても小排気量エンジンでクリアするのは難しく、50cc以下の排気量では、2025年11月以降に適応される次の規制を満たす車両を開発するのが困難というのが、業界のコンセンサスとなっている。

 しかしながら、講習だけで取得可能な原付免許で乗れる原付一種バイクを日常の足としている国民は少なくない。このまま原付一種バイクが消えてしまったら、国民の移動権を奪ってしまうことになる。そこで新しい排ガス規制をクリアしつつ、原付免許で乗れる規格として最高出力を4kWに制限した「新基準原付」が誕生する(であろう)というのが現在の流れだ。

 原付一種の排気量アップは排ガス規制をクリアするためだけといえる。そのため、新基準原付となっても公道での制限速度が30km/hであることや、一部交差点での二段階右折、ふたり乗りの禁止といった部分は変わらないと予想される。速度制限が変わらないのだから、原付通行禁止の標識にも従わなければいけないだろう。

 なので、ユーザーからすると積極的に新基準原付に乗り換えるメリットはないといえる。排気量が増えたことで発進性が向上するなどのメリットはあるだろうが、排ガス規制クリアのコスト分だけ車両価格も上がるであろうからだ。発進性に限っていえば、定格出力0.6kW以下に制限される電動の原付一種バイクのほうがスーッと加速できるだろう。

 情報を誤解したユーザーは、法改正により新基準原付が生まれれば中古の原付二種バイクに原付免許や普通自動車免許で乗れるようになると思っているようだが、それは無免許運転となってしまう。あくまでも最高出力が制限された新基準原付に限り、125ccのバイクを乗ることができるという話であることは留意したい。

 仮に法改正の中身をしっかりと把握しておらず、悪気がなかったとしても、無免許運転をしてしまうと、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という厳しい刑罰が待っている。いわゆる免許の点数といわれる行政処分においても25点が基礎点数となるし、前歴0回であっても運転免許の取消・欠格期間が2年になってしまう。

 なお、相手が原付免許であることを知っていて原付二種バイクを貸した場合も「無免許運転幇助」として同等の罰則が課されるので、しっかりと法改正の行方についてはウォッチしておきたい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報