カローラの名を使ってもダメだった! 格下の「シエンタ」に食われた「スパシオ」という「なんちゃってミニバン」の悲劇 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■カローラシリーズ初のミニバンがトヨタ・カローラスパシオだった

■カローラがベースのため、ミニバンとして使用するには窮屈だった

■2代目カローラスパシオは、1、2列目席の快適性を重視したパッケージに変更された

2代で消えたカローラスパシオを振り返る

 1990年代は日本のファミリーカーの変革時期だった。そう、1994年に初代ホンダ・オデッセイ、1996年に初代ホンダ・ステップワゴンが登場し、当時としては斬新だったFFレイアウトの多人数乗用車=乗用ミニバンという新しいカテゴリーが誕生したのである。もちろん、オデッセイ、ステップワゴンともに大ヒット。それをほかの自動車メーカーが黙って見ているはずもなく、急遽、3列シートの乗用ミニバンを続々と登場させたのだ。

 その1台が、ステップワゴンの対抗馬としてトヨタが2001年に発売したトヨタ・ノアに先駆けること4年、1997年にデビューしたカローラスパシオだ。初代は、もちろん当時のカローラがベースで、もっこりとした曲面を生かしたリヤセクションが特徴のエクステリアに2列シート4人乗り、3列シート6人乗りが設定され、パワーユニットは1.6リッターと1.8リッターを用意。

 しかし、当時のカローラベースのボディサイズ(全長4185~4210×全幅1690×全高1620mm、ホイールベース2465mm)ゆえの2、3列目席の中途半端な狭さから、ミニバンブームの最中とはいえ、ヒット作とはならなかった。

 そこで、2代目スパシオを、初代ノアのデビュー年と同じ2001年に登場させる。

 エクステリアデザインはドシリとした重厚さあるもので、リヤにいくほど切れ上がったショルダーラインを特徴としたエクステリアデザインの進化は著しかった。しかも、普段あまり使われない3列目をハンモック状の簡易シートとして割り切り、1・2列目席の快適性を重視したパッケージに変更。モデルバリエーションは品のいい標準車、エアロパーツを纏ったスタイリッシュなエアロツアラーを揃える。エンジンは1.5リッター、1.8リッターの2本立てである。

 基本シートレイアウトは2列。オマケ程度の3列シートを備えるものの、3列まで使うと荷物はまるで載らず、3列目席は一体式かつどう見ても緊急席でしかないのハンモック状だけに、大人の乗車は厳しいものだった。

 シートアレンジも限られ、まずは3列目を畳んだ荷室拡大モード。このとき3列目席がフロアに完全に格納されるので、いかにも畳んでますといったカッコ悪さはない。2列目はじつは3分割式。中央部分を倒すとひじかけに。タンブルして倒せば広大な荷室になるが、ロープで固定する手間が面倒だった。よって、スパシオを買った人は、基本的に3列目席を畳んで、荷室を拡大、というか、使えるようにしていたのである。

 荷室部分を具体的に説明すると、開口部地上高600mmは低くていいとしても、3列目席使用時はないに等しい。しかし、3列目席を畳むとフロアはほぼフラットになり、幅、奥行きともにたっぷり。4人分の小旅行用荷物やスーツケースも無理なく積める容量になる。左壁面にはデッキサイドポケット、右壁面にはDC12V電源ソケットも備え、あくまで2列シートで使う場合には、なかなか使い勝手のいいコンパクトミニバン、いや、コンパクトトールワゴンといえたのだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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