【試乗】極悪路こそが生息地! それでいてオンロードも快適! 三菱トライトンが開拓する新たな世界を堪能 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■三菱の話題のピックアップトラック「トライトン」にオフロード&一般道で試乗した

■トライトンは4WDと余裕ある最低地上高によって抜群の悪路走破性を披露した

■一般道でもスムースなハンドリングを披露し、トライトンの総合力の高さを感じた

ついに市販モデルの三菱トライトンに試乗

 ピックアップトラックとして世界中で大きなシェアを持つトライトンが国内市場へ再投入されることが決まり、 そのプロトタイプモデルの試乗を昨年北海道のテストコースで行ったが、今回はいよいよ市販モデルでナンバー付き車両をクローズドのオフロードコースと周辺の一般道を使用してテスト走行することができたのでリポートしよう。

 トライトンにはGSRとGLSの2グレードがラインアップされている。GLSはスタンダードな仕様で価格を抑えているのに対し、GSRはオーバーフェンダーを装着したり、またインテリアにレザーを多用するなど高級感を持たせ、ハイグレードモデルとして位置づけている。ただ、パワートレインやサスペンションなどの走行性能に関する部分は共通となっていて、どちらのタイプを選んでも同等の走行性能を有しているという。

 まずはオフロードコースの極悪な路面状況のなかで走破性のテストを行う。試乗車はGLSのスタンダードグレードのほうだが、18インチのヨコハマ・ジオランダータイヤを標準装着している。

 GLSの外観にはオーバーフェンダーなどが備わっていないため、一見、地味なピックアップトラックのように見えるが、全幅1865mm、全高1795mm、そして全長に関しては5メーターを超える5320mmあり、近づくとその大きさを改めて認識させられる。GSRにはオーバーフェンダーなどが装着されているので、全幅はプラス65mmの1930mmとなり、また全長もフロントバンパー形状の差などから40mmほど大きくなって5360mmとなっているが、最低地上高はどちらも220mmと変わらない。

 運転席に乗り込むと、三菱の特徴的な水平基調のダッシュボードに7インチのメーターパネルと9インチのセンターディスプレイが装備され、またエアコンなどのスイッチが物理スイッチとなって操作性に優れていそうなことが見て取れる。

 センターコンソールにはダイヤル式のスーパーセレクト4WDのセレクタースイッチが配され、またその右上にはノーマル、エコ、グラベル、スノー、マッド、サンド、ロックと7種類のドライブモードを選択できるボタンスイッチが配置されている。

 エンジンをスタートすると、デフォルトのノーマルモードでスタンバイするようである。4WDセレクターは、まず後輪2輪駆動の「2H」からフルタイム4WDとなる「4H」、センターデフロックで直結4WDとなる「4HLc」、さらにローギアでトラクションを高める「4LLc」と選択できる。

 4WDセレクトとドライブモードは関連しており、ノーマルとエコは「2H」時に選択でき、グラベルは「4H」時で、いずれも走行中でも変更可能。スノーは「4H」時、マッドは「4HLc」時、サンドとロックは「4LLc」時で、マッド以上のモードは停止してニュートラルポジション時に切り替えることができる。さらに、リヤのデフロックが可能で、走行状況に見合った組み合わせで走破性を確保しているのである。

 まずフラットな泥濘路を走り出す。ここは 「4H」で十分走破できるような路面である。急な下り坂(20度オーバーの斜度)の泥濘路は歩行が困難なほどの角度であり、また前日の雨で路面は深くぬかるんでいて非常に滑りやすいのだが、そこを苦もなく降りていくことが可能だ。また、「ヒルディセント」スイッチをオンにすれば、時速1〜20kmの範囲で任意に走行速度を制御でき、ドライバーはアクセルペダルもブレーキペダルも踏むことなくステアリングに集中することが可能となっている。

 こうした急な坂道を降りる際には、その進入時において前方の視界がなくなって道があるかどうかも不明な状態が起こるが、そんな時はセンターパネルのカメラボタンを押すと、前方および車両周辺の状況が画面に映し出され、前方に続く路面をしっかりと認識することができる。こうした安心装備に支えられ、悪路でも不安なく踏み入れていくことができるのがトライトンの魅力となっている。

 さらに林のなかを進んでいくと、路面カントの大きなコーナー、さらに上りや高低差が60センチほどある段差路など、普通のクルマではとても走行できないような悪条件の路面状況が続いていくが、トライトンは「4H」モードで苦もなく走破していける。また、その際にエンジン音や車体のきしみ音などがほとんどなく、極めて静かで室内は快適さを保っていることにも驚かされた。

 今回、ラダーフレームを新設計し、曲げ剛性やねじり剛性を大幅に向上させたこと。また、フロントサスペンションをダブルウイッシュボーン化しサスペンション剛性を高め、ホイールストロークを増やしたことで路面への追従性が高まったことなど、悪路での適応力が高まっているといえるのである。

 こうした極悪路は、たとえばアウトランダーやエクリプスクロスなどSUVモデルにとっては難易度が高いレベルだが、なんとか走破可能な路面といえるだろう。しかし、トライトンにとっては、ほとんど日常的な路面状況といっても差し支えないほど、世界の過酷な道で日常的に使われているのである。そうした状況を世界中の多くのユーザーからフィードバックを得てマーケット情報として活かしたクルマ作りが、新型トライトンには盛り込まれていて、その実力を垣間見ることができたのだ。

 さらに先へ進むと、アリの巣状のすり鉢の特殊なコースが待つ。また、左右段差が50センチはあろうというモーグル路と非常に困難な場面が続くが、そうした路面もトライトンは軽々と走破していくことができる。

 試しにモーグル路で前後の左右対角2輪を宙に浮かせ、意図的にスタックする状況を作り出してみたが、ドライブモードでマッドのポジションを選択すればセンターデフがロックし、またブレーキLSDが力強く空転車輪をつかみ、あっという間に脱出することができた。

 それでも脱出が困難であれば、さらにリヤデフをロックすることもマニュアルで可能であり、また「4LLc」モードをセレクトすることで、最強の悪路脱出性能を引き出すことができる。このように段階的に走破性をコントロールできるところも、トライトンの走りに深みを感じる部分だといえる。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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