新車カタログをみると燃費が2種類あるけどナゼ? WLTCとJC08モード燃費の違いとは (2/2ページ)

具体的な違いをズバリ解説

 さて、JC08モードにしろWLTCモードにしろ、言葉で表現するのは難しいほど非常に複雑な走行パターンが定められているが、その違いを手短に表現すれば、「停止時間(アイドリング)が長いのがJC08モード、高速走行・加速シーンが多いのがWLTCモード」と区別することができる。

 そもそもJC08というのは、「J」というアルファベットが入っていることからもわかるように日本専用に作られた計測モードで、渋滞や信号待ちを考慮したシチュエーションが多くなっている。そのため、アイドリングストップ機能が貢献しやすいモードという見方もできる。

 一方、WLTCというのは「Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle」の略称で、直訳すると「国際調和的軽量自動車用測定方法」となり、一般的には「世界統一試験サイクル」という和訳が使われている。国際的な測定モードであり、世界中の交通シチュエーションを意識したサイクルとなっている。そのため、速度レンジが高めになっているのだ。

 また、計測時に設定する車重についても異なる。JC08モードでは2名乗車を条件設定としているので、車両重量+110kg(1名55kgで計算)となるが、WLTCモードでは1名+荷物の車重を基準としている。WLTCモードにおける車重の計算方法は、車両重量+100kg+積載可能重量の15%というもので、ほとんどのケースでJC08モードより重くなる。

 結果として、JC08モードとWLTCモードが併記されているカタログスペックを見ると、後者のほうが数値としては悪化しているように見える。さらに、WLTCモードでは市街地・郊外・高速道路と3つのモードを組み合わせているのも特徴。各モードでの燃費データもカタログスペックとして記載されているので、個々のモデルにおいて、どんなシチュエーションが燃費に有利なのか判断する参考となることもある。

 そのため、WLTCモードのことを「現実に即した燃費測定方法」と表現することもあるが、前述したように測定モードというのは、あくまでも横並びで比較できるよう条件を揃えるための決まりごとであって、どちらがリアルワールドに近いかを評価すべきではないだろう。

 ベテランドライバーであれば、昭和から平成にかけての時期にエンジン出力の測定方法が「グロス」から「ネット」に切り替わったときにも同じような話があった。簡単にいうと、グロスというのはエンジン単体で計測した馬力であり、ネットというのは量産車と同じ吸排気系を装着して測った馬力となる。

 そのため、数字だけを見るとグロスのほうが大きく、「グロス馬力は信用できない」という話もあったが、ネット馬力についてもエンジンベンチといって車載ではない状態で計測したものである。エンジン・トランスミッション・タイヤといった具合で路面にパワーを伝えるリアルな状態とは、いずれにしても異なっているのだ。

 だから意味がないという話でもない。燃費にしろ、馬力にしろ、計測モードというのは、条件を合わせて比較するために必要なものであって、それ以上でもそれ以下でもないと捉えるべきだ。問題にすべきは、自動車メーカーが測定モードに合わせた“チート”セッティングをすることで、計測モードがリアルワールドと乖離することなのだが、数字で見える性能差が商品力として評価される限り、そうした自動車メーカーの取り組みをなくすことは難しいだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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