生産済みの車両は安全性が確認されているの新たには出荷停止……ってどういうこと? ダイハツ事件にみる「認証試験」の問題点とは

この記事をまとめると

ダイハツは認証不正により車両の出荷停止に至ったがすでに生産した車両の安全は確認されている

■開発段階のテストで得ているデータを改めて国が定めた方法で試験している現在の制度では試験を二重に行なっていることになる

■衝突試験の結果をもっと詳しく内容を明らかにすればさらに正確性の高いクルマ選びを行える

運転しても大丈夫なクルマが出荷停止になるワケ

 ダイハツは、型式の認証申請を行うときの不正を2023年に公表して、車両の出荷停止に至った。この問題でわかりにくいのは、出荷停止に至りながら、「生産された車両の安全はすでに確認されているから運転しても大丈夫」と説明されていることだ(ただしキャストなどはリコールを実施)。常識で考えると、運転しても大丈夫なら、出荷を停止する必要もないだろう。矛盾があると思われる。

 この矛盾の背景には型式制度がある。すでに生産された車両の安全は確認されているものの、型式の認証申請では前述の不正があった。従って車両の運行に問題はなくても、型式を改めて正しい方法で申請して認証を受けねばならない。型式認証を受けていないクルマは生産できないから、出荷を停止したのだ。

 目下のところ国土交通省は、ダイハツ車に関して、道路運送車両法の基準に適合するか確認作業を進めている。段階的に出荷停止処分も解除されている。

 ちなみに認証を受けるときの試験方法は、国が定めたものだから、その方法は守らねばならない。メーカーに都合のいい方法で試験を行えば、不正になって責任を追求されるのは当然だ。

 しかし、開発者に認証制度について尋ねると、以下のように返答した。

「ルールを守るのは当然で、そこに異論はないが、あくまでも個人的にはテスト方法にも改善の余地があると思う。たとえば衝突安全試験や燃費の計測など、開発の過程でデータを得ている内容も多い。すでに開発段階のテストで得ているデータを、改めて国が定めた方法で試験している。つまり、試験を二重に行っている面もある」

 ルールを守らなければならないのは当然だが、そのルールには、ムダを抑える改善の余地もありそうだ。メーカーとして合理的に得られているデータを、改めて昔ながらのアナログ的な方法で試験している事情もあるだろう。このあたりは、たとえば業界団体が国と連携して、合理的なテスト方法に改善することを考えるべきかも知れない。

 また、衝突安全試験については、国の基準とは別に自動車事故対策機構による自動車アセスメントも実施されている。新型車を中心に、衝突安全性/予防安全性/事故自動緊急通報装置などが評価され、ランキングも示されている。自動車アセスメントはすべての車種を網羅しているわけではないが、国の基準よりも厳しい内容で車種ごとの優劣もわかるから、ユーザーにとっては利用価値が優れている。

 ユーザーから見ると、型式の認証申請を行うために多額のコストを費やして衝突試験を実施するなら、その内容を公開してほしい。試験結果について、内部的に合格と不合格を知るだけでなく、何点だったのかをユーザーにも明らかにするわけだ。

 つまり、新型車について漏れなく実施する型式の認証申請に、自動車アセスメントの役割ももたせると、ユーザーはさらに正確性の高いクルマ選びを行える。検討していただきたい。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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