部品点数も製造工程も数十分の一! クルマ作りの超革新的技術「ギガキャスト」の多大なるメリットと意外と知らないデメリット (2/2ページ)

夢の技術かと思いきや……!?

 さらに生産工程やコストの削減も大きなメリットで、トヨタの場合、リヤまわりで部品点数が86個あったものがたったひとつに。生産工程も33工程から1工程になるというから、劇的な削減といっていい。テスラの車両価格が大幅な値下げを行なうことができたのもこのギガキャストが理由とされている。

 しかし、デメリットもある。まず生産面では巨大な設備に刷新する必要があって、もちろん新規での構築となるから、初期投資はかなりのものとなるだろう。アルミ素材も高く、高額化できるEVでの導入をメインとしているのは、コスト回収がしやすいから。とはいえ、普及すればコストは安くなるとされているので、今後、EV以外にも採用は進むはず。また、単純な問題として、でき上がった部品は大型で形状が複雑なので、運搬が大変ということもある。

 さらにアルミでフロアを作るとなると衝突安全性もイチからノウハウを見直さないといけなくなる。鉄は衝撃が増えるのに対して比例して変形していく特性があるが、アルミは座屈といって、あるところを境にして一気に変形するため、対応が難しい。

 そして、我々の身近なところでは、アルミボディの修理がほぼ無理ということが挙げられる。つまり、フロアは一体で作ってあるので、事故でグシャグシャにならなくても、後ろからぶつけられてラゲッジの床が曲がった程度で総取り替え、もしくは廃車になる可能性はある。

「高額なSUVを買える層なら気にしない」ということはないだろうし、将来的に一般に普及した場合、この点は一般ユーザーにも関わってきかねない問題だ。あらゆる面での影響も含めて、今後の普及に注目したい。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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