アルファード&ヴェルファイアを見るとトヨタ一強の理由がわかる! ただ「いいクルマ」じゃなく「売れるクルマ」とは? (2/2ページ)

グレード・パワートレイン設定も巧妙

 アルファード&ヴェルファイアの唯一の弱点は、周到な商品開発で高い人気を得ながら、それに見合う生産能力を確保できていないことだ。そこで、2023年に発売したときのグレード構成は、福祉車両を除くと、アルファードがZとエグゼクティブラウンジ、ヴェルファイアはZプレミアとエグゼクティブラウンジとシンプルな構成としてきた。

 パワーユニットは、ハイブリッドを両車種に搭載して、アルファードはノーマルガソリンエンジン、ヴェルファイアはターボをそれぞれ用意する。選択肢を少数の上級グレードに限ることで納期遅延を抑えようとのねらいだろうが、それでも生産規模が小さいために発売直後に受注停止に陥った。

 その後、2024年には需要が落ち着いてきた。そこで、両車種にPHEV(プラグインハイブリッド/充電可能なハイブリッド)を新設定し、アルファードにはハイブリッドを搭載する低価格グレードのXも加えた。

 注目されるのはPHEVだ。最上級のエグゼクティブラウンジだけに用意され、駆動方式は後輪をモーターで駆動するE-Fourのみだ。PHEVモデルの価格は両車種ともに1000万円を上まわり、ハイブリッド車・E-Fourのエグゼクティブラウンジに比べて183万円高い。

 この価格は割高だ。アルファード&ヴェルファイアの場合、エグゼクティブラウンジのハイブリッドも、PHEVとほぼ同等の装備を採用する。そのために、183万円の価格差が、PHEVとハイブリッドの差額にほぼ重なる。

 クラウンエステートでは、PHEV・RSはハイブリッドZに比べて175万円高いが、前者には100V・1500Wの電源コンセントなど20万円相当の装備も加えた。したがって、実質価格差は155万円に縮まる。ハリアーのPHEVは、アルファード&ヴェルファイアやクラウンエステートと違って急速充電器を使えない。それでもPHEVとハイブリッドの間で同様の計算をすると、PHEVの装備差を補正した実質的な価格アップは88万円に収まる。

 このように、アルファード&ヴェルファイアのPHEVは、ハイブリッドに比べて高価格で割高だが、これもトヨタの周到さだ。ユーザーが買い得度を細かく計算するノア&ヴォクシーなどは割安な設定にして、アルファード&ヴェルファイアの最上級グレードは、買い得度にこだわらないから価格を高めて儲けを増やす。かつてのクラウンマジェスタなどに見られた車種と価格帯に基づく買い得度の格差は、アルファード&ヴェルファイアにも受け継がれているのだ。


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渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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