「運転するだけの簡単なお仕事です」ってマジ!? 回送のバイトの面接に行ってみたら完全に心が折れる条件だった (2/2ページ)

回送後の移動が徒歩になることも

 まず、雇用形態が業務委託(雇用契約ではなく、会社と受託者は対等な立場)であることにびっくり。つまり給料は出来高制ということ。

 それと、回送するのは高所作業車やユニック付トラックなど建設車両であるといわれたが、もともとトラックの回送ドライバーだと思っていたので、そこはあまり気にならなかった。さらに、仕事の内容説明へと続くのだが、シンプルに説明するとこんな具合だ。

 仕事がスタートしたら、最寄りの公共交通機関を使い車両引き取り場所へ向かう。引き取り場所は工事車両のレンタル店や工事現場などだ。

 その後、指定された場所へ車両を運んだら、次の車両ピックアップ場所へ公共交通機関を使って移動。そこで2台目の車両を受け取ったら、再び指定された目的地へ向かう。この繰り返しで、多いときには1日で4~5台を回送することになる。

 ここで、移動にかかる費用が自腹だという事実が発覚する。「え? 移動費は会社が払うんじゃないの? これじゃ働いても給料減るじゃん」と思ったが、口には出さなかった。

 さらに驚くべきことに、回送中に事故が起きてしまったとき、修理代、損害金は10万円までが自腹だった。さすがに、このあたりで働くのは難しいと感じ始める。そして追い打ちをかけるように面接担当者は続ける。

「工事現場によっては入場ルールが厳しいところもあるため、ヘルメット。安全靴、作業着は自前で用意してください」。

 働く前に金がどんどん出ていくぞ。すでにテンションが下がってしまったが、まだまだ説明は続く。

 仕事の研修は先輩ドライバーに同行して1日のみ。回送時は高速道路使用不可。トラックには4トンよりもサイズの大きなものがある。要するにオバケ4トン(通常の4トン車をベースにサイズを基準いっぱいまで拡大したもの)だ。そのレベルになると自信がない。

 そして、最後にタブレットで地図を見ながら具体的な回送ルートの一例が説明された。

「ここで車両をピックアップして、引き渡しはここですね。そして、最寄り駅がここで……、あっ、駅まで遠いですね。3キロくらいかな」

 ちょっと待て! 駅まで3キロ? 歩きで? 30分以上はかかるぞ。

 あわてて「最寄駅が離れている場合、移動ってタクシーとか使えますか?」と聞いてみた。

「移動は歩きか公共交通機関です。回送台数が多い場合はスケジュールも詰まっているので、急いで移動しないとダメなケースもあります」

 心がポキっと折れる音が聞こえた。もはや説明を聞いても頭に入ってこない。さすがに30分の徒歩移動を1日数回、それも場合によっては小走りというのは無理があるだろう。

 遠くで担当者の声が聞こえる。

「工事現場ってだいたい郊外か開発前の場所なんですよね。バスが通っていないエリアも多くて。でも歩くことに慣れてしまえば、ラクな仕事だと思いますよ」

 その後、少し話をして事務所をあとにしたが、ここで回送の仕事をさせてくださいとはいえなかった。たしかに力仕事でもないし、業務内容は運転だけというのは間違ってはいないが……。

 そういえば募集にこんなことも書いてあったっけ。

「帰り途中で温泉地などの観光地があれば、景色やお土産などを楽しんでから帰路につくことも可能です」

 ちょっと想像と違ったトラック回送の面接だったが、念のためほかの業者も同じような条件なのかが気になった調べてみたところ、移動交通費は会社負担、事故が起きたときにも全額保険対応、ケースによってはタクシーや高速道路の利用が可能、給料は2週間に1回という待遇のところもあった。さらに、「ピックアップ場所によっては30分程度の徒歩移動もありますが大丈夫ですか?」と聞いてくれた会社もあった。

 回送ドライバーとひとくちにいっても、職種も職場のルールもまちまち。回送ドライバーがラクに稼げる仕事ではないということを学習ぶことができた。

 最後になったが、面接に行ったトラック回送ドライバーの募集内容は時給1600円だった。この金額が高いと思うか安いと思うかは人によるだろう。


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