スーパー耐久第2戦ST-Qクラスでいきなりのポール・トゥ・ウィン! クルマと人を育てるレースにスバルが挑戦する真の目的 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■自動車メーカーはレースに参戦することで実戦開発と人材育成を行っている

スバルは2025年度から新型「ハイパフォX」で次世代技術の実証に挑戦

■5時間レースで初勝利するも課題を抱えつつ次戦の富士24時間へ挑む

なぜ自動車メーカーがレースを行うのか

 参加型モータースポーツの頂点ともいえるスーパー耐久。長い歴史をもつシリーズで、最近は多くのエントラントが集まり、ピットの数やコース上での混雑などの問題から、新規参加を断らずを得ない状況になるほど盛況になっている。

 スーパー耐久は排気量や駆動方式により、現在10クラスに区分けされてレースを行っている。そのなかに、ST-Qクラスと呼ばれる、スーパー耐久未来機構が認めた自動車メーカーの開発車両も出走しており、実際のレースのなかで実験を行い、将来の自動車開発に向けた知見を得る機会としている。

 自動車メーカーがなぜレースに参戦するかといえば、レースという過酷な環境のなかで起こる自社テストコースでの開発メニューでは得られない事象の検証を行えることがまずひとつ。また、メカニックの育成という側面もある。レース中のトラブルはレース中に解決策を練らなくてはならず、さらに次のレースの日程は決まっているので、限られた時間のなかで次への解決策を考え、実行していく必要があるためだ。

 また、ライバルと戦うだけではなく、「共挑」という共通スローガンを掲げ、メーカー同士が垣根を取り払い、今後どのように活動していくのかなど、お互いに一緒に戦える部分は共有していこうという活動も行っている。そしてなにより、ライバルと戦うことによって自社の強みと弱みを理解することになり、より開発にも力が入るようになる。このような理由が挙げられるだろう。

2025年も参戦車両は軽量化とエンジン制御を盛り込みアップデート

 スバルも、2022年から「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」を投入してST-Qクラスに参戦してきた。

 スバルにはテストドライバーという専門職がなく、エンジニアが自らステアリングを握り開発も行う。その運転スキルを磨くために設立されたのがSDA(スバルドライビングアカデミー)と呼ばれる組織だ。そのSDAを主体として、さまざまなエンジニアがこのレース活動に参加している。

 BRZで2年半活動を行い、そこで得た知見や技術が、2025年1月10日に発表されたBRZ向けの「SUBARU Sport Drive e-Tune」に繋がっている。レースカーにおける、アクセル操作に対してエンジンが忠実に反応するスロットルセッティングを市販車向けにアジャストすることで、まさにレースで得た知見が生かしたものとなっているのだ。

 スバルは長らくBRZで開発を続けてきたが、次世代のスバルのスポーツカーやAWD技術、ターボ技術、そしてEV技術を磨くために、2024年9月のスーパー耐久第4戦からは「SUBARU High Performance X Future Concept(通称ハイパフォX)」にマシンチェンジを行いレースに挑んでいる。

 現行WRX S4ベースに見えるが、その中身は市販車とはまったくの別物。これはスバルがもち合わせる技術を集めた1台で、エンジン、ターボ、プロペラシャフト付きAWD技術、カーボンニュートラル燃料、EV車に向けた4輪制御など、多くの技術開発を同時に行うための車両だ。

 2024年シーズンではさまざまな開発を行いながら、トラブルを克服しレースに挑んできた。2025年には、スーパー耐久第1戦のもてぎ4時間レースをスキップし、この第2戦・鈴鹿5時間レースに向けて車両開発を行ってきた。

 今回盛り込まれた技術のひとつには、軽量化が挙げられる。

 スバルには飛行機のパーツを作る航空部門がある。そこでは自動車とは比較にならないほどの品質と強度が要求されるカーボン素材を使い、航空機のパーツを製造しているが、どうしても端材が生まれてしまい処分されてきた。今回、それらの高品質のカーボン素材を再生した軽量かつ高強度のカーボン素材を使ったボンネットやリヤドアを製作し、軽量化を行ってきたのだ。

航空部門の端材を利用して作られたボンネット

 また、オリジナルのオーバーフェンダーは、技能五輪全国大会出場者が板金作業で作り上げたものを採用している。社内の優秀な技術者の技を披露する場として今後も活用していくことも考えているという。

 エンジンは市販車のWRX S4と同じくFA24エンジンを使っているが、カーボンニュートラル燃料(CNF)を用いる特別仕様だ。これまでエンジンレスポンスやアンチラグの制御などを行ってきたが、今回はアクセルの微開領域におけるターボの高過給圧を維持するトルクリザーブ制御を採用してアップデートを行ってきた。


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