二種免許の形骸化が進むことへの懸念も残る
警察庁は、従来と比べて問題のないレベルの教習を確保できるとしているが、6日必要だったものを3日にしようとなると、二種免許の存在自体に疑問符がつくともいえる。つまり、二種免許の形骸化が進んでしまうのではないかということである。
一種免許があればクルマは運転できる、それではなぜ二種免許が必要なのか? これを教習を通じて知る、ある種悟りを開かないと真の二種免許所持者とは呼べないし、安心・安全に乗客を目的地まで運ぶ自信はつかない。筆者は実地試験免除、つまり技能検定試験を教習所で行えるようになった時点で、二種免許の形骸化を危惧していた。
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また、一種免許で長いことクルマを運転してきた間に、道路の真ん中を走ることができないなど独特のクセがついてしまったひともいるので、そのようなひともクセが抜けないなか二種免許を取得し、タクシー運転士として独り立ちしてしまうことにもなりかねない。
つまり、教習日数を削減しても、教習所へ通い二種免許の取得が必要となっていれば、状況は大きく変わらないなかで二種免許の形骸化というものも進んでいきそうなのである。
あるひとが日本型ライドシェアを、「タクシー業界の新たな規制緩和」とたとえてくれた。ライドシェアということでドライバーは一種免許取得後1年が経過していればOK。ドライバーはタクシー会社が雇用し、車両やドライバーなどの運行管理もタクシー会社が行うことになっている。車両は原則自家用車もち込みとなっているが、タクシー会社が車両を用意し、保険なども万全として貸し出すといったケースも意外なほど耳にする。つまり、二種免許を必要とせず自家用車の使用もOKという以外は、タクシーと大きく違わないのである。
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日本型ライドシェアが存在し、二種免許取得に必要な教習日数が短縮化されるならば、二種免許という制度自体を廃止し、業界団体公認として業界内ライセンス(従事している間だけ有効)を与えて自主管理したほうが、希望者を時間もかからずにタクシー運転士にすることも可能で、運転士不足解消にも効果が期待できそうだと筆者は考えている。
大昔には、運転免許をとると自動的に二種免許もついてきた。その後、運転免許試験場の構内コースのみでの実地試験の導入となり、さらに運転免許試験場での一般公道も加えての検定実地試験導入となり、そして現在の実地試験免除となっている。
大型二種免許についても実地試験は免除となっているが、あるバス業界関係者いわく、「実地試験免除の前後では、あきらかに実地試験免除後に二種免許を取得した運転士のほうが社内研修を行っても手がかかるケースが目立ってきている」とのことだ。
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乗用車では、各種安全運転支援装置の装備が当たり前となっており、タクシーでもいまは車両選択が自由となっているので、安全運転支援装置が充実してきている。それゆえ、「根性論」的なものを教える必要はないとの声もあるし、事実、若い世代の運転士は客観的なデータなどに基づいた指導が有効との話を聞いたことがある。
くれぐれも「数(タクシーの稼働台数)は確保できたけど、事故が目立って増えた」とならないことだけは祈りたい。