この記事をまとめると
■中国・上海には上海汽車・上海通用・上海通用五菱・上汽大衆などの自動車メーカーがある
■かつての上海は上汽大衆=フォルクスワーゲンの人気が高かった
■中国民が自国ブランド車を好んで乗るようになったことで外資ブランド車が減少した
上海で圧倒的な人気を誇っていたフォルクスワーゲン
中国の大都市のなかには、ご当地メーカーが存在するところがある。たとえば首都北京ならば北京汽車や近くの天津市には中国一汽、広州市なら広州汽車、深圳市はBYDオート(比亜迪汽車)、重慶市は長安汽車、そして上海市には上海汽車がある。上海汽車は独自ブランドとしては栄威(ロエベ)、MG、上汽大通(マクサス)があるほか、アメリカGM(ゼネラルモーターズ)との合弁会社として、上海通用(通用はGMの意味)、上海通用五菱、そしてドイツVW(フォルクスワーゲン)との合弁会社として上汽大衆(大衆はフォルクスワーゲンの意味)がある。ちなみにアウディ(奥迪)は中国一汽が合弁パートナーとなり、“一汽奥迪”が存在する。
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その名のとおり、上海汽車が上海のご当地メーカーであるなか、筆者が20年ほど前に初めて上海を訪れて以降、上海の街にはVW車が溢れていた。かつては上海だけではなく、広く中国各地でVWサンタナがタクシーとして活躍していた(北京は一汽大衆のジェッタ[2代目]が多く、筆者は好んで乗っていた)。上海では上海万博(2010年)開催のタイミングでVWのミニバンとなる“トゥーラン”が大量にタクシー車両として供給された。官公庁や企業役員車などではVWパサートが大活躍、まさに上海=VW車となっていたのである。
2025年に開催された第21回上海モーターショー(上海国際汽車工業展覧会)ではどうだったのかは定かではないが、過去にはモーターショー会場内で開催されるプレスカンファレンス出席のため、ウォルフスブルグのヘッドクォーターよりVW幹部が上海を訪れると、上海市長が貴賓室のような場所で幹部を出迎えるというニュースが定番のように流れていた。
新型コロナウイルスの感染拡大もあり、6年ぶりに上海を訪れたのだが、街を走るクルマの様相が一変していた。欧米だろうが日本だろうが、とにかく外資ブランド車が極端に減っているのである。筆者としては可能な限りインターネットなどで中国車の情報をアップデートしてきたつもりだが、それでもタクシーに乗って移動していると、車名がパッと浮かばない、もしくはそもそも見たことのないような中国メーカーのおもにBEV(バッテリー電気自動車)が周囲を走っていた。
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日本で得られる情報ではとにかくBEVしか走っていないようなイメージが伝わってくるが、実際は年式の古いICE(内燃機関)車が目立つのだが、高年式のICE車も結構走っていた。しかし、あれだけ多かったVW車は激減していた。比較的新しいタクシーでVW車らしいモデルもあったが、あの“VW”マークがない。これは一汽大衆のローコストブランドとなる“ジェッタ”のタクシーで、VW系車両とはいえ上海大衆ではなく一汽大衆の車両であった。上海大衆で見かける車両といえばBEVとなるID.4ぐらいであった。