「EV化を一気に進めようと思ったけどやっぱり2030年はハイブリッドが主役で行きます!」 ホンダの柔軟な変更はアッパレな決断!! (2/2ページ)

二輪車では世界シェア50%を目指す

 さて、ホンダの「2025 ビジネスアップデート」では電動化戦略以外にも注目すべき発表があった。

 三部さんは、ホンダの役割について「人々に自由な移動の喜びをサステナブルに提供し続けていくこと」とまとめているが、さまざまな人に移動の自由を与えてくれるテクノロジーがAD(自動運転)やADAS(先進運転支援システム)であるという認識は変わりない。

 もはや燃費性能やエモーションな走りだけで自動車ビジネスが持続する時代でもない。AD/ADASの進化は自動車メーカーの生き残りにおいて必須の領域となる。つまり、知能化を軸とする競争力強化はHEV主体の戦略においても不可欠といえる。

 ホンダはEVブランドの「Honda 0」においては将来的なアイズオフを目指していることを発表している。アイズオフとは、自動運転レベル3以上のAD機能をもつという意味だ。

 しかし、LiDARなど高価なセンサーを使うAD機能をラインアップの多くに搭載するのは、販売価格の面からも現実的とはいえない。ホンダはどうするのだろうか?

 そんな疑問への回答も、今回のビジネスアップデートでは発表された。一般道・高速まで全経路でアクセルやハンドル操作を支援する次世代ADASを開発中で、2027年ころには日米で搭載モデルを「低コスト」で提供開始するという。

 次世代ADASの技術的な内容については未発表だが、一般道でも加減速と操舵を制御するということは、いわゆる自動運転レベル2++と呼ばれる機能を目指していると理解できる。

 ホンダといえば、四輪だけでなく同社のルーツである二輪事業においても世界のトッププレイヤーである。直近のホンダ二輪事業をグローバルにみると、世界シェア40%、新車販売台数は2057万台となっている(※2025年3月期)。

 そして、二輪市場については今後も拡大が期待できるというのがホンダの読みで、世界的なマーケット規模は5000万台から6000万台へ成長するという。そのなかで、長期的には世界シェア5割を目指すというのが、ホンダのビジネスプランだ。

 このように、四輪電動化戦略の軌道修正を発表したホンダだが、「2050 カーボンニュートラル & 交通事故死者ゼロ」という高い目標について変更はないという。ゼロエミッションへのスピード感は変わったとしてもゴールは動いていないというのが、ホンダの認識といえる。

 たしかに、欧米での環境規制の緩和というのは、非常に政治的な匂いが強い。筆者の個人的な印象でいえば「中国製EVの進化が想定以上なので、時間を稼ぐために環境規制を緩めている」ようにも見える。そこにプラスして、いわゆる『トランプ関税』による通商的な課題も直近では大きくなっている。

 ホンダの「2025 ビジネスアップデート」の内容は、目まぐるしく変化する自動車業界において、柔軟に対応できることを示したと理解できるだろう。


この記事の画像ギャラリー

山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報