この記事をまとめると
■2021年11月以降日本で販売される新車には「衝突被害軽減ブレーキ」の装備が義務化された
■「衝突被害軽減ブレーキ」が装備されていても事故が発生する可能性は十分にある
■衝突までの時間がなかったり天候不良でシステムが動作しないことが主な原因だ
衝突被害軽減ブレーキがあるのになぜ事故が起こる?
2021年11月以降、日本国内で販売される新車については「衝突被害軽減ブレーキ(Advanced Emergency Braking System ※以下:AEBSと表記)」の搭載が義務化されている。
それ以前にもAEBSの搭載モデルは少なくない状況だったことや、平均的な使用年数が13年程度であることを考えると、現実的には街なかで見かけるクルマの多くにAEBSが搭載されているはずだ。
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しかし、これほどAEBSの標準装備化が進んでいるにもかかわらず、交通事故の報道を見かけることが多い。ニュース映像に映る事故車両が新しいモデルだったりすると、「AEBSがついているはずなのに、なぜ(こうしたシチュエーションでの)事故を防げないのだろう」と感じることもあるのではないだろうか。
あらためて整理すれば、AEBSとはカメラやレーダーによって前方にある障害物や車両、歩行者などを検知した上で、衝突が避けられないとシステムが判断すると自動的にブレーキをかけるというもの。衝突の回避や被害の軽減を狙うという先進安全機能の代表格として知られている。
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もちろん、AEBSが万能ではないから事故が起きるのだが、事故に至るパターンは大きくふたつにわけることができる。
ひとつは障害物を検知しているがブレーキの作動が間に合わなかった場合。もうひとつはそもそもAEBSが作動しなかったケースだ。
障害物などを検知、アクシデントを予見していながらブレーキの作動が間に合わない理由を単純化すると、制動距離に対して対象物の検知が遅かったことが原因となる。
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たとえば、急に自転車やバイクといった素早く動くモビリティが飛び出してきた場合、いまのセンサー能力では検知が遅れてしまうこともある。自車の速度がシステムの能力を超えているときも衝突を回避するタイミングに間に合わないことがある。
また、交差点を曲がった先に歩行者が立っているようなケースではセンサーの検知が遅れてしまい、ブレーキが間に合わないことがある。最近のAEBSにおいて、交差点の右左折時に対応したシステムも増えているが、これらはセンサーの検知範囲を広角にして、死角を減らすことで実現している。
そのほか、雪道など滑りやすい環境では、タイミング的にはAEBSが正常に作動していても、タイヤと路面のグリップが足りないために制動距離が伸びて、衝突を回避できないこともあるだろう。