この記事をまとめると
■上海市内にはBEVも多いが、ICE車やHEV、PHEVも意外なほど多く走っていた
■中国各地で開催されるモーターショーでもBEV以外の技術展示が目立つ
■政府は地域差に応じて多路線戦略を採用し、柔軟な移行を図ろうとしているのかもしれない
日本での報道とは異なる印象を受ける中国の実情
日本国内での報道を見る限りは、中国における新車販売台数のなかでNEV(新エネルギー車/BEV[バッテリー電気自動車]、PHEV[プラグインハイブリッド車]、FCEV[燃料電池車])が全体の4割になっている、ということもあり、中国へ行けば街を走るクルマはほとんどBEVのような印象を受ける。
だが、実際に中国の上海に訪れると、確かにBEVはよく見かけるが、それよりも意外なほどICE(内燃機関)車をよく見かけたことに驚いた。
また、中国ではキャッシュレス社会が普及しており、スマホアプリ以外はほとんど使えず、クレジットカードはおろか現金の支払いなどもってのほか、という報道もよく目にしていたのだが、到着した空港のインフォメーションカウンターにいる女性に聞くと、「現金も使えますよ」と意外な答えが返ってきた。
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現地でタクシーに乗った際に、筆者が「スマホ決済で」と伝えると、かなり驚いた様子で決済準備をするドライバーが多かった。日本人に限らず、外国人はいまだに現金決済してくることが多いのかなあ、などとも感じた。日系デパートでは現金だけではなくクレジットカードも使えるので、場所は限られるもののすべてがスマホ決済というわけではないようだ。ただし飲食店では、スマホでオーダーしてスマホで決済するというフローが大衆的な店ほど徹底しており、現金決済は難しいようだった。
最新の完成車やその技術、自動車部品などが展示される上海モーターショー(上海国際汽車工業展覧会)でも、各メーカーの展示ブースを覗くと、新興BEV専門メーカーなどは別として、総合メーカーに近い規模の大きい中国メーカーではHEVやPHEVのほうが多く展示されているように見えた。北京や上海、広州あたりの中国3大モーターショーでは、よりその傾向が高い。技術展示も積極的に行われているのだが、そこに展示されているものはハイブリッドシステムなどが目立っていた。
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タクシーやバスは、諸外国では真っ先にフル電動化の対象になりがちなのだが、上海市内の路線バスでは、EVモデルはコロナ禍以前から走っているような車種が多く、コロナ禍前には見かけなかったような新しい車種ではPHEVモデルが多かった(とはいえ、ほぼBEV走行していたようだが)。また、トロリーバスはリチウムイオン蓄電池を搭載しており、架線のある道路で蓄電して、架線のない道路では蓄電した電気を使って走らせているようだった。タクシーも基本はBEVのようなのだが、HEVやICEも新車も含めてまだまだ多かった。
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