中国ではBEVに頼り切らないマルチパスウェイが主流となるか
上海モーターショーでは、外資・中国メーカーを問わずエンジンの展示も目立っていたのだが、とくにフォルクスワーゲンブースでは、歴代のエンジンがずらりと並んで展示されていた。その光景は、まるで開き直って「エンジンならお任せを」と主張しているようであった。
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そのフォルクスワーゲンブースに、ラヴィーダというモデルが展示してあった。2008年に中国市場限定のセダンモデルとして初代がデビューしているのだが、展示されるのはいまや3代目となり、その姿を見て同窓会で久しぶりに旧友に会った気もちになった。しかも、いまだにマイルドハイブリッドでもない純粋なガソリンエンジンのみを搭載するとのことで、「中国もまだまだICEなんだなあ」とつくづく感じてしまった。
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中国政府としても、いずれは完全電動化ということは考えているだろうが、欧州のように先走っているわけでもない。いわば「マルチパスウェイ」を政府が推し進めているのである。国土が広く、沿岸部と内陸部では環境がまったく異なる中国では、ある日突然ICE車の販売を禁止する、というわけにはなかなかいかない。
前出のラヴィーダは、日本車でいえばトヨタ・カローラくらいのサイズのモデルとなる。その価格は、初代モデルのデビュー当初は約7万元(当時のレートで100万円前後)だったのだが、3代目モデルでもウェブサイトを見ると期間限定で6万9800元(約139万円)、平時でも7万9990元(約159万円)となっており、円換算すると為替相場の関係でそれなりに高くなっているが、中国元ベースでは17年前とそれほど価格が上がっていないことにも驚いた。
BEVが普及している中国とはいえ、同じフォルクスワーゲンが販売する最小BEVのID.3は12万9888元(約259万円)からとなっているので、BEVに軸足を置きながらも、環境負荷低減や燃費性能向上を果たしたICE、HEV、PHEV、BEVから消費者の懐具合などに合わせて選んでほしいとしているのが中国の現状のように見える。
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中国は強権発動のできる政府体制だが、欧州のようにそれをしないところは、ICE車では西側先進国のあとを追いかけることしかできなかったが、BEVで主導権を取りたいという部分と、自国の自動車市場とはわけて物事を考えているため、というようにも見える。
上海市内では、「こんな古いクルマが」と思うような低年式車を意外なほど見かけることができる。これが地方部へ行けば、さらに目立ってくることになるだろう。このようなユーザーには、とりあえずエミッション性能の高い最新ICE車へ乗り換えてほしいという部分もあるのかもしれない。