この記事をまとめると
■ホンダ「S-MX」は1996年11月18日にデビューした
■ステップワゴンのショートモデル的な立ち位置でアメ車のミニバン風のテイストだった
■フルフラットになる前後シートなどを備えカップルズカー的なキャラクターであった
歴史に残る珍車「S-MX」とは
過去のホンダ車には、市場のニーズよりも自らの想いやアイディア、技術を優先して開発された「プロダクトアウト」の傾向が強いクルマがいくつか見受けられる。
それらの多くは強烈な個性をもち一世を風靡するも、余りにも突飛すぎて実際に買うユーザーが少なかった、あるいは時代を先取りしすぎてほとんどのユーザーがついていけなかったため、その代限りでモデル廃止になった。
そんな個性的すぎるホンダ車のなかから今回は、1996年11月18日にデビューした「S-MX」をピックアップし紹介したい。
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ホンダというメーカーは創業者・本田宗一郎氏の魂がそうさせるのか、何事においても極端に走りがちであり、それが長所でもあり短所でもある。そんな傾向はクルマのキャラクターにおいても同様で、「タイプR」シリーズは硬派すぎるスポーツカーの代表格といえるだろう。
一方でホンダは、ほかのメーカーではなかなか見られないナンパなクルマも、数多く生み出してきた。その代表的なモデルが、1995年の東京モーターショーに参考出品され、翌96年11月22日に発売された「S-MX」である。
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メカニズムは同年5月10日に発売された初代「ステップワゴン」の2列シート・ショートボディ版というべきもので、全長×全幅×全高は3950×1695×1735〜1765mm、ホイールベース2500mmというコンパクトなサイズ。リヤドアは同じく左側にしか備わらないものの、ステップワゴンのスライドドアに対し、S-MXはヒンジドアを採用していた。パワートレインは全車ともB20B型2リッター直4NA+コラムシフト4速ATを搭載している。
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なお、車高が標準モデル(FF車)より15mm低い「ローダウン」は、単に車高を下げるだけではなく、前後スプリングおよびダンパー、リヤスタビライザーを専用のハードなセッティングに変更。195/65R15タイヤのロードインデックス&速度レンジを91H(ほかの仕様は91S)に高めることで、路面の凹凸に対して跳ねやすい乗り味を意図的に与えていた。
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しかしエクステリアデザインは、ステップワゴン以上に顔つきや面構成がシンプルで、かつ全長が655mm、ホイールベースも300mm短い寸詰まりのプロポーション。乱暴にいってしまえば、当時ニッチな注目を集めていたアメリカ製ミニバンのエッセンスを、日本で扱いやすいコンパクトなサイズのFF(前輪駆動)乗用車に落とし込んだものだった。