その仕様、まさにカップル専用車
そして室内のパッケージングこそが、S-MXがもつ最大の特徴であり、S-MXをナンパの極みたらしめている最大の要因であるのは間違いない。
デビュー当初は4人乗りの前後ベンチシート(後席は300mm前後スライド&ポップアップ格納機構付き)が全車に採用されていたのだが、これが左右の移動しやすさ、もっと言えば左右のカップルディスタンスをいかようにでも変えられることを優先した形状で、乗員のホールド性など二の次三の次だった。
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しかも、前席のヘッドレストを外して(後席ヘッドレストはディーラーオプション扱い)前後席の背もたれを倒せば、2146mm×1180mmというセミダブルベッドなみのフルフラットな空間が出現する。加えてシートベルトバックルはシート内に収納され、ドアがない後席右側にはティシュボックスが2個入る大型のボックスや小物が入るシークレットボックスも備わるという親切設計。露骨すぎるほどに「カップルズホテル」ならぬ「カップルズカー」だったのだ。
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しかし、1999年9月のマイナーチェンジで、5人乗り仕様のフロントセパレートシート+50:50分割可倒式リヤシートが全車標準装備に。デビュー当初の前後ベンチシートは、「ローダウン」でのみ選択可能な形へと大幅に絞られた。
このことからも察せられるように、注目こそ集めたものの販売は決して好調に推移したとはいえず、モデルライフ後半には当初の開発コンセプトさえも迷走。2002年8月に販売を終了するが、そのパッケージ思想はアウトドアホビー向けにシフトする形で、直後の同年9月19日に発売された「モビリオスパイク」へ受け継がれている。
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