500馬力のミラージュ! トルク90kg-mのBRZ! 魔改造車がゴロゴロ集う全日本ダートラD2マシンたち (2/2ページ)

まさにモンスターマシンばかりが集まるD2クラス

 一方、ランサーをベースに名門サプライヤーであるHKSが開発した田口勝彦選手の1号車「HKSランサーエボリューション」は最高出力が500馬力と抜群のパワーを発揮。その一方で、最低重量が1250kgとBRZに対してはやや重い状況となっている。

 自身のマシンに対して田口選手は「パワーだけならもっと出せるんですけど、ダートトライアルは低速コーナーが多いので、敢えてパワーを抑えつつ、トルクを生かして3000回転ぐらいの領域での使いやすさを意識しています。車両重量ももっと軽くしようと思えば軽量化できますが、バランスとしてはベストな状態だと思います」と分析。

 ちなみに最高速度は173km/hだが、これについては「ギヤ比の関係で最高速度は決まってくるし、ダートトライアルはアベレージ的に80〜90km/hぐらいのスピードなので、トップスピードは気にしていません」とのことである。

 また、ミラージュにランサーのパワーユニットを詰め込んだ炭山裕矢選手の3号車「ZEAL by TSDLミラージュ」も最高出力は500馬力となかなかハイパワーだ。

 その一方で、車両重量は1175kgとやや重く、スナガワでの最高出力も170km/hにとどまっているが、このスペックについて炭山選手は「本当はもう少しパワーはほしいんですけどね。タービンを変えればパワーが出ると思いますが、軽量化については限界に近い。もう少しやれることはあると思うんですけど、うちはプライベーターですし、ミラージュを投入してから10年ぐらい経つので、現状を維持しながら新しいクルマを作っていきたい」とのことである。

 ちなみに改造範囲の狭いPN3クラスやNクラスのマシンと比較してみると、PN3クラスで活躍する竹本幸広選手の061号車「YH・KYB・スラパ・GR86」の最高出力は235馬力、車両重量が1300kg、最高速度が135km/h、Nクラスで活躍する岸山信之選手の052号車「BRIDE★DL★GRFヤリス」の最高出力が304馬力、車両重量が1300kg、最高速度が142km/h。

 PN車両とN車両はエンジンの改造が行えないことから、最大出力はノーマル車と変わりなく、車両重量も競技車両として軽量化を図りながらもロールケージやガード類が装着されていることから、ほぼノーマル車両と同じかちょっと重たい状態だ。このことからも、いかにD車両がモンスター的な仕上がりになっているかが窺えることだろう。

 まさにスペックだけを見れば、WRCのラリー1規定モデルに匹敵する状態だが、「いま全日本ラリー選手権ではシュコダ・ファビアR5に乗っていて最大出力250馬力ぐらい車両重量も1240kgぐらいなんですけど、足まわりがよくできており、とてもよく曲がるしコントロールがしやすい」と鎌田選手が語れば、APRC(アジアパシフィックラリー選手権)でファビアR5に乗ってきた炭山選手も「ファビアのほうがレーシングカーですね。重心が低いしバランスもよかった。それに比べるとD車両のミラージュは市販モデルに近いと思う」と語る。

 それでも、WRCやAPRCで三菱ランサーのグループA仕様車をドライビングしてきたほか、全日本ラリー選手権ではGRヤリス・ラリー2での出場経験をもつ田口選手は、「やっぱりD車両は特別です。ほかのランサーとは違いますね」と語っているだけに、全日本ダートトライアル選手権のD2クラス車両は唯一無二の魔改造モデルが競う場となっているのである。


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廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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