けっきょくアメリカ国民が高いクルマを買うハメに! アメリカの国力アップを狙ったトランプ関税のわかりやすい行く末 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■トランプ大統領の関税政策では関税は輸入する人がアメリカに支払うもの

■日本に輸入される自動車には関税はかかっていない

■関税は対米輸出で稼いでいる自動車メーカーにとってはマイナスとなる

トランプ大統領が乱発する関税は日本で買うアメ車にも影響ある?

 ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任する前から公約として掲げていた「関税」政策が世界中を混乱させている。

 あらためて整理すると、関税というのは「輸入品に対して課される税金」である。

 日本からアメリカに輸出している自動車を例に考えてみよう。アメリカは、すべての輸入車に27.5%の関税をかけている。より細かくいえば、以前は2.5%だった自動車関税を、2025年4月から10割増しにしたというのが、トランプ政権による自動車関税の増税だ。

 ちなみに日本政府は、どこの国で生産していようが輸入車への関税はかけていない。つまり、アメリカ産のクルマを日本に輸入する際には関税はない。アメリカが増税した自動車関税はあくまでアメリカに入ってくるクルマに関するものであり、アメリカから他国へ輸出されるクルマにかかるものでない。日本でアメリカ車の販売価格が上がるような影響はほとんどないと考えられる。

 さて、アメリカが関税を増税した影響はどれほどになるのか。日本からアメリカへ自動車を輸出するといったシチュエーションで考えてみよう。

 わかりやすい数字にすると、日本円で150万円程度の卸値(アメリカでは1万ドル相当とする)となっている自動車がアメリカに陸揚げされると、輸入した企業や個人が2750ドルの税金をアメリカ政府に納めることになる。単純にいえば、これで関税の支払いはひとまず終了だ。

 しかしながら、関税が増えたことで、輸入した企業としてはそれまで1万250ドルで輸入できていた自動車が、1万2750ドルになってしまう。輸入業者としては同じ製品が関税によって2500ドル値上がりしたことになる。

 仮に、従来はそのクルマを1万5000ドルで販売していたとしよう。値段を変えずに販売すると、儲けは4750ドルから2250ドルに激減してしまう。関税が増税される以前と同じ利益を出すならば、1万7500ドルで売らなければならない。そして、この場合において、関税の増税ぶんを負担するのは消費者になってしまう。つまり、アメリカでは輸入品が関税によってインフレ状態になってしまうのだ。

 一方、関税というのは輸入品に対してかけるものだから、すべて国内で生産された商品についてはまったく影響は受けない。そのため、高い関税をかけると国内でのものづくりが盛んになるという考え方もできる。ただし、自動車についていえば、すべての部品をアメリカ国内で作っているというケースはレアである。自動車部品にも高い関税がかかるために、最終的にはアメリカ産自動車でも関税による価格上昇圧力は発生する。

 ただし、関税による価格上昇をすべて消費者に押し付けるのは得策といえない面もある。同じ機能やデザインのまま、何千ドルも価格が上がった商品を素直に購入するとはいえないからだ。まして関税というのは、アメリカ産の商品にはかからず価格も上昇しない。そうなるとアメリカの消費者は輸入品を買わなくなり、アメリカの工場での増産が進む……というのが自然な流れともいえる。

 トランプ大統領は、アメリカのものづくりを復活させたいという狙いもあって関税をかけているというのは、上のようなシナリオを期待しているからだろう。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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