レース参戦の準備とシミュレーションによる実戦トレーニング
マツ耐を理解していただいたところで、今回の3期生によるトレーニングに話を戻すと、今回参加した3期生は、これまで同様に全員が同じパーカーに身を包み、まさにワークス的なムードが漂う5名(残念ながら1名が不参加)。その緊張した面持ちの5名に対し、育成ドライバーの指導を担当するTCRジャパンの加藤彰彬氏によるルールや競技に対する心構えなど、まずは最低限知っておかなければならない事柄の講義が行われた。
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その内容をピックアップすると、まずひとりひとりが選ばれし6名であるという自覚をもって行動してほしいということが、加藤氏から開口一番に伝えられた。マツダ・スピリットレーシングというだけで、まわりのエントラントから常に注目を集め、時には羨望の眼差しで見られることも。それだけに、規律をしっかりと守り、チームの一員としていま何をすべきか、何を求められているのか考えて競技に臨んでもらいたいということだ。
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また、競技自体は、限られた時間内でいかに多く周回できるかということが順位を左右するが、このマツ耐の面白さは、競技中のピット内のクルーの行動やレース中のドライバーのルールに対する理解度など、すべてにおいて規定が設けられ、それらに違反するとペナルティが課せられるということ。だからこそ、競技に集中するだけでは勝つことができない。
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そんな特別に設けられるルールのなかで特筆すると、「競技中最高気温が30度を超すとすべての競技車両にエアコンの使用が義務付けられ、競技中にドライバーやピットクルーが体調不良を起こした場合、決勝結果から5周の減算もしくは失格とする」というのがある。これは、参加する全員が安全面を第一に考えてレースに臨んでほしいというオーガナイザー思いが含まれており、時には危険を伴うレースだからこそ、まわりに気を遣うことで危険を回避し、競い合うことの楽しさ、やり遂げた達成感を感じてもらいたいというこの競技の根底を表している。
そんな競技ルールや、チームの輪を大切にすること、また装備品、そして実際に走る時の注意点、走り方などの講義の内容はとにかく濃い。約2時間に渡り行われた講義のあとは、いよいよシミュレータによる実戦に近い状態でそれぞれコースを走っていく。
今回用意されたシミュレータは、SPKが輸入・販売代理店を務めるMotionSystems社のシミュレータ4機。それぞれが特徴的で、価格は600万円から2000万円というラインアップ。
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このシミュレータは、当然の如く周回を重ねるとタイヤのグリップは落ちてくるし、ブレーキのタッチが変化するなどまさに実践さながら。その4機を5名でシェアしながらまずは筑波サーキットをそれぞれ全開アタックしていく。最初はやはり、スピンなどコースをオーバーする場面が多く見られたが、それぞれ2~3機目のシミュレータに臨んだころにはオーバーランなどはなくなり、安定したラップを刻んでいく。
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3期生全員のベストタイムを比べてみるとほぼ同タイムの1分4秒台。さすがは、選ばれし者たち。実力は伯仲している。
次に、行われたのは最終戦で走る岡山国際サーキット。ここは、全員が初めて走るサーキットということで、まずはコースに慣れることからスタート。慣れたところで全開アタックを行っていくのだが、ここもほぼ同じようなタイムで周回を重ねていく。ひと通り全員が4機のシミュレータを体験したところで、次は燃費を考えた走行だ。エンジン回転数を6000rpmに押さえての走行にそれぞれがチャレンジしていく。
3期生のほとんどが燃費走行は初めて行うということもあり、タイムは安定しない。しかし、コースのアップダウンが頭に入ってきたころには同じラップタイムを重ねることができるようになり、燃料の消費量も講師の加藤氏から伝えられた数字に近づくなど、実力のあるメンバーであることが今回のトレーニングでよくわかった。
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次なるトレーニングは、実車での走行テストへと続いていくのだが、3期生がチャレンジするのは全6戦のなかの第3戦・筑波サーキット、第5戦・富士スピードウェイ、第6戦・岡山国際サーキットで開催される3つのレース。どのような結果を出してくれるのか、ぜひとも注目してみたい。