この記事をまとめると
■助手席や後席の背もたれはシートベルトが的確に機能する角度までなら倒しても問題ない
■背筋を伸ばして立っているときに近い姿勢に背もたれを調節するのがラクな着座姿勢
■走行中のクルマの助手席や後席で休憩するとしても背もたれを倒し過ぎないほうがいい
リクライニングの機能はあれども走行中の使用はOK?
座席の背もたれは、どこまで倒してよいのか? 運転席については、正しい運転姿勢がとれる角度ということになる。
では、助手席や後席はどうなのか? クルマで移動する際はすべての席でシートベルトを装着することが義務付けられている。したがって、万一の際に、シートベルトが的確に機能する角度までになるだろう。
クルマの助手席画像はこちら
では、その角度はどれくらいなのか。ドイツの自動車用座席で有名なレカロは、適切な着座姿勢について「立つように座る」といっている。
身体のなかで一番重いのは、頭だ。これを支えるのが脊椎であり、立ち姿がもっとも効果的に脊椎は頭を支えている。背中が丸まってしまうと、脊椎の本来の状態が保てないため、頭を支えるのが困難になるし、骨盤が傾いて負荷が増え、腰が痛くなる。
座席の背もたれを大きく傾けると、一時的にラクに思えるが、じつは身体には負担がかかっている。たとえば寝ていても、あおむけで同じ姿勢を続けると、寝返りを打ちたくなるのではないか。座席や敷布団で体を支えていると思えても、脊椎が本来の形状を保てないと、体のあちこちに負担が増す。
助手席を倒した状態画像はこちら
とはいえ立っていればやはり疲れるではないかと思うだろう。それは足が疲れるのであって、腰や肩はそれほど酷く疲れないのではないか。また、日本の正座も、足は痺れるが、頭を支えるという点においては、立つように座るの延長にある姿勢で、体には楽な座り方だ。だから、お茶席などで長時間正座を続けていられる。胡坐をかくほうが、かえって疲れやすい。
前置きが長くなったが、重い頭や上半身を支えるには、立ったときがもっとも自然で、適切な脊椎の状態になる。その姿勢を、座席に座ったときも保てるように仕立てたのが、レカロというわけだ。そのことからすると、クルマの座席に座るときは、運転席だけでなく助手席や後席においても、背筋を伸ばし、立っているときに近い姿勢に座席の背もたれの角度を調節するのがラクな姿勢といえる。
シートベルトを適切に装着できるのも、その姿勢だ。したがって、すべての席において、正しい運転姿勢と同じような姿勢になるように背もたれの角度を調整するのが望ましい。それによって、万一の衝突に際し、シートベルトが適切に機能し、エアバッグも効果的に保護してくれることになる。
助手席の背もたれを起こした状態画像はこちら
助手席や後席で、背もたれを大きく倒していると、衝撃でシートベルトから体がすり抜け、機能しなくなる恐れがある。それでは、シートベルトをしていないのと同じだ。また、エアバッグも体を受け止められなくなる。
座席のリクライニング機構は、体格に応じて、正しい姿勢で座ることを調整するための機能であり、背もたれを大きく倒すとしたら、それは停車して休憩をしたり、車中泊をしたりするときのための機能と解釈すべきだ。
背もたれを倒した助手席画像はこちら
背中を起こした姿勢では苦しい気がすると思う人は多いだろう。しかし、一度試してみると、長距離移動でも疲れが少ないことを実感できるのではないか。衝突事故に至らないまでも、急ブレーキで危険を回避するような場面では、たとえ速度が時速20km程度の低さでも、かなりの衝撃がある。走行中のクルマの助手席や後席で休憩するとしても、背もたれを倒し過ぎないことだ。その姿勢でも、案外、眠れるものだ。