今後もハザードスイッチは物理スイッチとして残る
そんなハザードスイッチは、2000年以前の国産車をみるとステアリングコラムの上に設置されていることが多かった。しかし、いまではインパネ中央のナビ画面やエアコンパネルに近い一等地に置かれていることが多い。ドライバーからの操作性でいえば、ステアリングコラム上でも問題ないと思えるが、なぜインパネ中央に移動することになったのだろうか。
フィアット500のインパネ画像はこちら
確認しておきたいのは、ハザードスイッチの場所はインパネ中央でなければならない……と決まってはいないことだ。たとえば、テスラはルームミラーの根元あたりにハザードスイッチを置いているが、この場所でも保安基準は満たしている。
テスラのハザードスイッチ画像はこちら
物理スイッチを極力廃したインテリアをデザインするテスラでさえ、ハザードスイッチが物理的に残っているというのは、それだけ重要なスイッチであることの証左といえるだろう。
実際、ハザードスイッチはエンジンが始動していないとき、電動システムが起動していない状態でも機能するようになっている。補機バッテリーさえ生きていれば、どんなときでも点滅するようになっている。同じランプを使うウインカーはシステムオフでは点滅しないことを考えると、ハザードランプが重要な機能として位置付けられていることが理解できるだろう。
さて、国産車の多くでインパネ中央に赤地に白い二重三角のハザードスイッチが置かれるようになった理由については諸説あるが、重要なのは暗い状況でスイッチを認識できるようするためだろう。夜間やトンネル内など暗い状態でもすぐにハザードスイッチの場所を認識するためには照明付きのスイッチにすることが理想的だ。
ハザードスイッチのアイコン画像はこちら
仮に、ステアリングコラム上に照明付きスイッチを配置するとドライバーの視界に入りすぎるし、メーター情報やワーニングランプの視認性に悪影響が考えられる。そうであれば、ナビ・オーディオやエアコン操作パネルの近くに照明付きハザードスイッチを置くというのは、運転を邪魔せず、スイッチの視認性を上げるという意味でベストポジションといえる。
もうひとつの指摘として、助手席からの操作性を確保するため、という意見もある。ドライバーが意識喪失したときに、助手席からハザードスイッチを操作できるようにすることは、非常事態を周囲に伝えるという本来の機能を満たすものであり、合理的だ。
今後、自動車のユーザーインターフェースは音声やジェスチャーによるものが増えてくると考えられている。また、これからの主流となるSDV(ソフトウェア定義車両)が機能追加するためには、タッチパネルを利用することが前提となっている。
BMWのジャスチャーコントロール画像はこちら
しかし、それでもハザードスイッチは物理的に残り続けるだろう。万が一、システムが落ちたとしても、乗員が周囲に危険を知らせるために必要な機能といえるからだ。自動運転時代には後席にしか乗員がいない可能性を考えると、天井中央などハザードスイッチのベストポジションを再考する必要があるかもしれない。