クルマはカラフルなのにタイヤは黒一色! じつはカラータイヤは作れるのに作らない理由とは?

この記事をまとめると

■ゴム製のタイヤは1888年に誕生しておりそのときは白であった

■1910年に黒いタイヤが誕生してから長いことタイヤは黒一色だった

■技術的にはカラータイヤの製造も可能だが需要がないので販売されていない

黒いタイヤ以外は需要がほぼない!

 ゴム製の空気入りタイヤの歴史はけっこう長い。タイヤの黎明期ともいえる1888年には、ダンロップがタイヤを実用化し、1895年にミシュラン兄弟が自動車用の空気入りタイヤを初めて開発、使用した。なお、このころのタイヤの色は白かった。

 それが「タイヤ=黒」となったのは、1910年に、BFグッドリッチがカーボンブラックを補強材として使用し、タイヤの耐久性を向上させるのに成功してから。ゴムに黒い炭素の粉末、カーボンブラックを混ぜることで、ゴムの強度が飛躍的に向上することがわかり、大きな荷重を支え、エンジンの力をしっかり路面に伝えるためには、カーボンブラックが欠かせない素材となった。

 このカーボンブラックは、コピー機のトナーや印刷インキや、マスカラなどの主原料で、黒色の着色材としても普及していることからもわかるとおり、混ぜればその製品は必然的に黒くなるため、タイヤの色も黒がスタンダードになっていった歴史がある。

 もっとも、黒一色ではつまらない、もっとカラフルでファッション性の高いタイヤを! ……という声に応えて、1960年代にはタイヤのサイドウォールを白で着色したホワイトウォールタイヤやホワイトリボンタイヤも登場するが、汚れが目立ちやすく、白の塗膜がひび割れたり、剥がれやすかったため、10~20年でほぼ自然消滅……(現在も一部で新品が販売されている)。

 その後、2000年にBFグッドリッチが、ドレッド面に赤・青・黄などのカラーラインをつけたタイヤ「スコーチャーT/A」を発売。ブリヂストンもサイドウォールへのカラー印刷技術「カラーサイド」を使った、カラーサイドタイヤを2013年に発売を開始したが、わずか2年で販売終了!

 オフロード用のタイヤなどを中心に、タイヤメーカーのロゴやブランドロゴなどを白くした「ホワイトレタータイヤ」はいまでも見かけることがあるが、タイヤ本体が着色された本格的なカラータイヤを求める声は、いまでもほとんど聞かれない。

 技術的にはカーボンブラックの代わりにシリカ粒子などを使って、カラータイヤを製造することは可能といわれているが、カラータイヤが普及しないのは、それを望む声がないからというのが1番の理由だといえる。

 クルマのボディカラーにしたって、日本では白、黒、グレー、シルバーの4色だけで73%を占めるといわれているので、多くの人が無難な色しか選ばない傾向が明らかだ。タイヤ=黒のイメージを覆してまで、カラータイヤを欲する人はごく少数派で、カーボンブラックを超える画期的な補強剤が登場しない限り、今後もカラータイヤが量産される可能性はかなり低いといっていいだろう。


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藤田竜太 FUJITA RYUTA

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