大径ホイールを用いて低くセンスよく仕上げる
カスタムの手法は意外とシンプルで、まず車高を限界まで下げるのが最重要です。そしてホイールは極力大きいサイズを装着します。広い面の印象が強いヨーロピアン系のメーカーが重宝される傾向がありました。この大径ホイールというのは、じつは車高を下げることと相反する要素なので、見えないところの工夫が必要になります。
ヨーロピアン系のホイールを装着し車高を下げたVIPカー画像はこちら
たとえばサスペンション。安易にバネを短くするだけでは満足のいく低さに届かないので、専用の車高調が必要になります。車種によってはアームがボディやメンバーにヒットすることもありますので、そこも加工が必要です。また、もとの設計より大径のタイヤがサスペンションストロークの限界(以上)まで上がるため、タイヤハウスの内側に当たりますし、ステアリングを切ればフェンダーに、場合によってはフレームなどに干渉します。
さらに、ホイールはできるだけディープなリムのものがエラいとされるため、必然的に幅が太くなり、さらにスペースがなくなるので、それをどう収めるかがマニアックな視点で評価されます。そして、最終的な仕上げとして、ボディの下端まわりと地面との収まりを整えるために、リップスポイラーやサイドスカートなどエアロパーツを装着します。
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まとめてしまうと、多くの人が憧れる最上位車種をベースに、とにかく低く、迫力の大径&深いリムのホイールを装着して、センスよくまとめるのが「VIPカー」というジャンルだといっていいでしょう。
■なぜ要人でもないのに「VIP」?
みなさんご存じのように、一般的に「VIP」という単語は「Very Important Person」、つまり「要人」という意味になります。翻って当時の「VIPカー」乗りは、一部の人は実際に要人だった可能性もありますが、実際はほとんどが高級志向のトッポい兄さんたちでした。
それがなぜ「VIP」と呼ばれるようになったのか、ハッキリとした由来は定かではありませんが、もとが「AMG」や「Lorinser」、「König」など海外の高級セダンをカスタムするメーカーに憧れて始めたということから発したという説や、日本の裏家業の幹部たちが乗っていそうなスタイルからという説、あるいは単に高級路線を極めたからという説などがあるとされています。個人的には「VIP」という単語の意味と響きがよかったからではないかという説もあわせて推します。
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この「VIPカー」がブームとして認知され始めたのは1990年代の前半ですが、カスタムのスタイルはそれ以前からの、いわゆる「族車」の流れを明確に感じますので、その発展系と考えられるでしょう。また、「VIP」とほぼ同時期に生まれた「バニング」というワンボックスのカスタムにも同じ匂いが感じられますし、その後の「スポコン」や「スタンス」などの置き系カスタムにその遺伝子は引き継がれているとも感じます。
「VIPカー」を見る機会はかなり減ってしまいましたが、時代は問わず、「低さは正義!」というイデオロギーはまだまだ受け継がれていきそうです。