たとえ「お礼」がしたくてもハザード点灯は避けるべき! 全ドライバーに今一度考えてほしいクルマのハザードランプの使い方

この記事をまとめると

■ ハザードランプは緊急時や停車時に周囲へ危険を伝える装備

■ ダッシュ中央の配置は誰でも即操作できるように設計されたものだ

■ サンキューハザードは本来の用途と異なり誤解や危険を招くおそれがある

ハザードはあくまで「非常時」のためのもの

 ウインカーと同じランプを左右同時に点滅させるのが、ハザードスイッチだ。

 ハザードランプは、日本語では「非常点滅表示灯」という。つまり、非常時に作動させる灯火である。では、非常時とはなにを指すか?

 法律では用途について、「夜間に道幅が5.5メートル以上の道路に停車したり駐車したりする際に点灯を義務付け」ている。ハザードランプに代わる措置として、テールランプ(尾灯)の点灯でもよい。街灯のないような暗い道で、後続車や対向車が停車中のクルマに衝突するなどを防ぐための予防措置だ。

 ハザードランプは、危険を知らせる目的で装備がはじまった。そして現在では、急ブレーキをかけた際に、ブレーキランプとあわせてハザードランプが自動的に点滅する機能も採り入れられている。要は、非常時や緊急事態を周囲のクルマに知らせるための装備である。

 そのため、初めて乗るクルマでも、運転者や同乗者がすぐにそのスイッチの場所がわかるように、現在は、ダッシュボードの中央に設定されている場合が多い。またこうすることによって、運転者が不具合をもよおしたとき、助手席の人が操作することもできるようになる。

 一方で、本来の機能とは別の使い方をする場面が増えた。そのひとつが、サンキューハザードと呼ばれる「ありがとう」の挨拶代わりに点灯する行為だ。しかしこれは、本来の使用目的に反している。なぜなら、ハザードは非常事態や緊急時に用いる装備だからだ。

 サンキューハザードは、駐停車時でもなく緊急時や非常事態でもない。そこに危険を予防するための装置を使うことは、たとえそれが他人への配慮という真心であっても本末転倒であり、場合によっては誤認される懸念がある。

 また、数回の点灯を挨拶代わりにするとはいえダッシュボード中央へ目線を動かすことになり、ハザードランプを走行中に使うことは前方不注意になる懸念がある。もしそのとき、前を走るクルマが急停止したら追突しかねない。サンキューハザードは、そういう危険な行為だ。

 ハザードランプを点灯して停車したあと発進する際は、ハザードランプを消灯し、右側のウインカーを点灯して、後方確認をしてから発進する必要がある。つい最近、プロフェッショナルな運転者であるはずの個人タクシーが、ハザードランプを点灯したまま発進し衝突しそうになったことがある。乗客を乗せたり降ろしたりして、すぐに発進したかったのかもしれない。だが、ハザードランプの消し忘れがかえって他人に被害や損害をもたらす交通事故につながりかねない。

 サンキューハザードを含め、安易であったり、無意識であったりした状態で不用意に使う装備ではないのである。

 ハザードランプのスイッチが、ダッシュボード中央というもっとも目立つところに配備されている意味をきちんと知ることで、安全への意識も高まるのではないだろうか。適切に運転操作をすることは、万一の際に人を負傷させかねない大きなエネルギーをもったクルマを使う上で最低限の原則だ。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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