GTIはじゃじゃ馬でRには安定感がある
もちろん通常運転、通常の路面状況ではここまで極端な挙動変化は起こらないし、自身も制御がこれほど強力に介入しているとは知らなかった。ただ、先代ゴルフ7をCARトップのホームである筑波サーキットで「ドリキン土屋さん」交えて比較試乗したときも、ドライ路面にもかかわらず、その旋回性能からゴルフRのハンドリングをふたりで絶賛した記憶が蘇る。
古くはランサーエボリューション7以降のAYC(アクティブ ヨー コントロール)が旋回する方向に向けて、後輪の外輪に駆動トルクを加え「リヤからフロントを曲げに行く」と例えたほどその強烈な制御と効果は身体に染みついている。なぜなら、その開発のためにスーパー耐久シリーズに参戦したのだから。
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ゴルフRにこれほどアクティブな機能、効能があったとは改めて驚きだが、「リヤからフロントを曲げに行く」効果はPEC東京の路面のうねりが大きいS字の連続で明らかに舵角とは別の力でノーズがインを向くことで体感できる。ちなみにPEC東京のサーキットレイアウトはいまさらだけど、ドイツ・ニュルブルクリンクのS字と向きは逆だがカルーセル、アメリカ・ラグナ セカのコークスクリュー、ロードアトランタの最終コーナーを模した世界の名所が日本で味わえる楽しいコースだ。
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ゴルフRからFWDのGTIに乗り換えて同じ状況を行く。まずは軽快さゆえの豪快なパワフルさがGTIらしい。フロントにLSDが備わるため、駆動力はダイレクトに伝わるものの、うねりでタイヤの接地荷重が軽くなる際にアンダーステア方向に逃げる。フラットな路面では問題ないが、うねりではアクセルを戻すコントロールでノーズを狙ったラインに留める必要がある。FWDと4モーション、最大の違いである駆動力の差が如実に現れる。
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カルーセルを目指してS字を抜けてフル加速する際、路面の荒れにタイヤが接地変化を起こしてステアリングを取られるのはGTIだ。そのじゃじゃ馬ぶりもGTIの醍醐味なのだが、安定するのは「R」なので、Rのいい面ばかりが目立つ。
Rヴァリアントは緊急回避と思えるパイロンスラロームが連続する試乗場で、標準ボディと違いを明確にする。パイロンスラロームで速度と左右の振り返しで慣性モーメントが増えると、最後の最後でテールスライドを誘発する。旋回中にアクセルを瞬間OFFしてステアリングを切り込む、極めて不安定な状況に陥らせているのは間違いないが、そこはアクセルを踏み駆動力を与えれば姿勢は立ち直る容易さをもっている。もちろん最大の違いは荷室スペースの容量で、荷物満載でもカッ飛べる世界最速のハンドリングカーワゴンの1台に数えられる。
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GTIを軽快といったが、じつはRで動き出した瞬間にも軽快さが感じられた。実際、前後重量バランスに優れているのはもちろんRのほうで、4輪駆動に起因する重量感が感じられない点も素晴らしい。
ドイツの国民車、ゴルフの最上級モデル、ゴルフRは高性能なメカニズムと走りの素晴らしさ、作りの堅牢さは相変わらず素晴らしい。2BOXカー好きとして自信をもっておすすめできる。ただし700万円を越える価格に見合うクラスか!? といわれると、ひとクラス上に目が移ってしまうのが正直なところ……。
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