日本のバス&タクシーは「自動で走れる」だけじゃ成り立たない! 自動運転での無人化には「運転以外のサービス」問題を解決する必要あり (2/2ページ)

日本ならではのサービスと電動化への歩みが足枷か

 あくまで筆者の私見でいえば、完全無人運転となった際に、現状のように現金払いもできるような便利で多様な運賃の支払いというのは実現が困難ではないかと考えている。もちろん技術が進歩し、今後は顔認証で運賃収受を可能とするなど技術は日々進化しているので、完全無人運転となっても運賃収受の利便性を損なわない環境整備ができているかもしれないが、かなりイレギュラーなトラブルが発生しても、その解決には現状より手間や時間が増す可能性は否定できない。

 運賃収受だけではなく、現状では車いすに乗っている利用者の乗降に際しては、運転士がスロープを設置し、多くの場合は運転士が車いすを押して乗降を手助けしている。こうなってくると、完全無人運転の実現には、車いすに乗っている利用者をバス停到着時に検知したら、自動的にスロープが出てくるような専用車両というものが必要になってくるのではないかと考えている。世界的に注目されている車いす乗車のサービスも、運転士がいてこそ成立するものとなっているのである。

 タクシーについては、諸外国ではすでに完全無人運転での営業運行も始まっているとしたが、日本では有人運転ありきでの「ユニバーサルデザインタクシー」の導入促進を政府が行っている。トヨタJPNタクシーのように車いすのまま乗降できる車両をタクシーとして使おうというのだが、現状JPNタクシーでは車いすでの乗降可能なためのスロープ設置は運転士が行うことになっている。アメリカや中国では、一般的なタクシー車両にそこまでを要求しないので、すでに完全無人運行が始まっているものと筆者は考えている。

 つまり、日本で路線バスやタクシーの現状でのサービスレベルの維持をしようとすれば、完全無人運行化というのは少々イメージしにくく、自動運転とはいうものの補助操作要員がいつまでも乗車してくることになるのではないかとも考えてしまう。

 日本ではとくに働き手不足対策という意味合いで自動運転が注目されているなか、ハードだけなど「枝葉末節」的にデジタル化や自動化に取り組む傾向がある。路線バスやタクシーの自動運転化には、「有人ありきのサービスをどこまで無人自動運転に落とし込めるのか」といった目線をもたないと、自動運転タクシーやバスの導入について諸外国に比べて時間を要するだけではなく、サービスレベルの大きな低下すら招きかねないと筆者は考えている。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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