トヨタのアルミテープにホンダアクセスのギザギザエアロ! みんな効果があるっていうけどマジ? なんで効くの? (2/2ページ)

目に見えない物理現象を制御することでクルマの走りが変わる

ホンダアクセス「シェブロン」は小さな突起で大きな空力効果

 一方、ホンダアクセスによる「シェブロン」もまた、理にかなった空力デバイスとして登場した。シェブロンとはフランス語でV字型や山型を意味し、車体の特定部位に設置されるV字や山形の小さな突起状のものだ。リヤスポイラーやルーフスポイラーの端部に装着するこのパーツは、見た目にはほとんど目立たない。しかし、この小さな突起が空力性能に大きな影響を与えるのである。

 シェブロンの原理は「ボルテックスジェネレーター(渦発生装置)」と呼ばれる空力デバイスと同じである。航空機の翼などにも使用されているこの技術は、小さな突起によって意図的に渦を発生させ、空気の流れをコントロールするもの。

 クルマの場合、リヤスポイラーやルーフスポイラーの端部では、上面と下面の圧力差により渦が発生する。この渦は抵抗となり、走行安定性を損なう要因となる。シェブロンは、この自然発生的な渦を制御された小さな渦に分割することで、全体的な空気抵抗を減少させるわけだ。

 また、シェブロンによって生成される渦は、スポイラー表面での空気の剥離を遅らせる効果もある。これにより、スポイラーの効率が向上し、より少ない面積で同等のダウンフォースを得ることができる。結果として、空気抵抗を増やすことなく走行安定性を向上させることが可能となる。

 ホンダアクセスの実験データによると、シェブロンの装着により高速域での直進安定性が約10%向上するという。とくに横風を受けた際の車体の安定性向上が顕著で、高速道路での長距離走行時に疲労軽減効果も期待できるとされている。

科学的根拠に基づくチューニングの最前線

 トヨタのアルミテープとホンダアクセスのシェブロン。これらふたつのアイテムは、アプローチこそ異なるものの、その本質においては共通する思想をもっている。それは、「目に見えない物理現象」を巧みに制御することで、クルマの走行性能を向上させるという点だ。静電気の放電と、微細な空気の流れの整流。どちらも、従来のチューニングのようにエンジンパワーを上げたり、足まわりを硬めたりするような直接的な介入ではない。しかし、その効果は多くのドライバーが体感し、メーカーもその有効性を認めている。

 これは、現代の自動車開発が、いかにミクロなレベルでの物理現象にまで目を向けるようになっているかを示す好例といえよう。空気力学や静電気学といった科学的根拠に基づき、これまで見過ごされてきた、あるいは重要視されてこなかった要素に焦点を当てることで、クルマがもつ本来の性能を最大限に引き出す。それは、既存の枠にとらわれない、まさに「新たな気付き」を与えてくれるチューニングアプローチである。

 これらの技術は、単に速さを追求するだけでなく、クルマの「質」を高めることに貢献している。安定性、応答性、乗り心地、そしてドライバーが感じる安心感。これらはすべて、クルマの運転体験を豊かにする上で不可欠な要素である。アルミテープやシェブロンは、それらをより高いレベルで実現するための、極めて地味ながらも強力なツールなのだ。

 信じられないかもしれないが、実際に多くのクルマ愛好家がその効果を体感し、納得している。クルマの進化は、大排気量化や電動化といった大きな変革だけでなく、このような微細な物理現象の解明と制御によっても、着実に進んでいるのである。もしあなたが、これまで眉唾物だと決めつけていたのなら、一度、ご自身の愛車でその効果を体験してみてはいかがだろうか。そこには、きっとあなたのクルマ観を覆す、新たな発見が待っているはずだ。


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