水素を燃料にすればクルマはエコってわけじゃない! 「グレー」「ブルー」「グリーン」と水素には3つの色が存在する (1/2ページ)

この記事をまとめると

■水素は製造方法により「グレー」「ブルー」「グリーン」と環境負荷で色わけされる

■グリーン水素はCO₂を出さない理想の水素だがコスト面に課題が残る

■日本は福島や山梨などで水電解装置の実証実験を進め量産化を目指している

製造方法で変わる水素の「色」

 自動車の電動化が急速に進むなか、電気自動車(EV)への注目は高まる一方である。一方で、次世代のクリーンエネルギーとして注目を集めているのが「水素」だ。走行中に水しか排出しない究極のクリーンエネルギーとして、燃料電池自動車(FCV)の普及に向けた動きも活発化している。

 しかし、この水素、宇宙でもっとも豊富に存在する元素でありながら、非常に軽いため、常温常圧では大気中にとどまることができない。安定した状態で存在するために、地球上では水(H2O)やメタン(CH4)など、ほかの元素と結びついている。そこで、私たちが水素を得るためには、それらを分解・抽出して製造しなければならない。

 この製造方法こそが、水素を「グレー」「ブルー」「グリーン」と色わけする理由になっている。ここでは、次世代エネルギーの最右翼と目される水素が、いかにして生み出されているのか、それらの製造方法とそれぞれの「色」が意味する環境的・技術的背景を詳しく解説しよう。

 グレー水素は、天然ガスや石炭などの化石燃料を原料として製造される水素を指す。製造過程では「改質」と呼ばれる技術を使用する。たとえば、メタンガスに高温の水蒸気を反応させて水素を取り出す水蒸気改質法は、すでに工業分野で広く利用されている確立された技術だ。

 しかし、この方法では製造過程で二酸化炭素(CO2)が発生してしまうという問題がある。現在流通している水素の多くはこのグレー水素であり、コスト面ではもっとも優れているが、カーボンニュートラルの観点からは課題が残る。

 ブルー水素は、グレー水素の製造過程で発生するCO2を回収・貯留する技術を組み合わせたものだ。主に工場や発電所などから排出されるCO2を大気中に放出する前に「つかまえて」「地中に埋める」CCS(Carbon Capture and Storage)という技術、CCSに「U(Utilization=有効利用)」を加えた、回収したCO2を「埋めるだけでなく、役立つものに変える」CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)という技術があり、これらの技術は大気中へのCO2排出を大幅に削減できる。

 製造方法自体はグレー水素と同じ化石燃料ベースだが、環境への影響を最小限に抑えることができる。現在、この技術の実用化に向けた研究開発が世界中で進められている。

 そして、もっとも環境に優しいとされるのがグリーン水素である。これは再生可能エネルギーを使って水を電気分解(電解)することで製造される水素を指す。製造に使用する電力が再生可能エネルギー由来であれば、CO2を排出しない「理想的な」クリーン水素となる。

 ただし、大量の電力を必要とするため、現時点ではコストが高いという課題がある。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの発電コストが低下するにつれて、グリーン水素の経済性も向上することが期待されている。


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