「究極のエコカー」は市販されているのに普及せず! 国の本気度が見えない「水素燃料電池車」の行方 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■FCVは水素を燃料に燃料電池スタックで発電し、その電気でモーターを駆動させるEV

■現在はトヨタMIRAIとヒョンデNEXOの2モデルが発売されているだけ

■燃料電池車がこれからどのように普及していくのかの明確な道筋はまだ見えていない

FCVは水素で発電してモーターを駆動させるEVの一種

「究極のエコカー」、そんなフレーズで一時、世の中の注目を一気に集めたのが燃料電池車だ。英語では、フューエル・セル・ヴィークル(FCV)と呼ばれる。いまさらながら、「燃料電池とはなにか」について一般的にはあまり知られていないと思う。この燃料と電池というふたつの言葉から、技術的、そして具体的なイメージを持つのが難しいからではないだろうか。

 実際には、水素を燃料電池に通すことで発電し、それを使ってモーター駆動させて走る仕組みだ。つまり、燃料電池車とは、水素を使い自車発電する電気自動車なのだ。ホンダは以前、クラリティを市場導入した際、FCVを「燃料電池電気自動車」と称していたこともある。

 燃料電池車について将来の量産化を目指して大きく進み始めたのは、いまから20年ほど前の2000年だ。アメリカのカリフォルニア州で、カリフォルニア・フューエル・セル・パートナーシップ(CaFCP)という試みが同州環境局を中心に始まった。

 トヨタ、ホンダ、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)、GM、フォード、ヒョンデ(当時はヒュンダイ)などが参加して、車両開発や水素インフラの研究などを共同で行うという自動車産業史の中で極めて稀なプロジェクトだ。

 筆者は2000年代からカリフォルニア州でCaFCPを定常的に取材してきた。現在もCaFCPは存続しているが、2010年代以降は、自動車メーカー各社が燃料電池車の量産化、または燃料電池車の開発プログラムの休止を決めたことで、事実上、各社の共同プロジェクトという形式ではなくなった印象がある。

 そうしたなかで、燃料電池車で大きな節目となったのが、2014年のトヨタ「MIRAI」の発売開始だ。

 これを受けて、国は2015年を「水素元年」と位置付け、それまで普及を進めてきた家庭用のエネファームに加えて、燃料電池車の普及促進を進めた。車両としては、「MIRAI」に次いでホンダ「クラリティ・フューエルセル」が登場したが、一方で日産は事実上、燃料電池車の関連事業を休止してしまった。

 さらに、ホンダもクラリティの商品改良を進めたが、現時点(2022年3月)ではモデルラインアップから燃料電池車は消えている状況だ。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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