RCカー時代の経験がいまに活きている!
──最近はeスポーツ出身のドライバーがリアルなモータースポーツシーンで活躍しています。で、eスポーツの経験がかなり役に立っているそうですが、RCカー出身ドライバーである奥本選手の場合、その経験はリアルなモータースポーツで役に立つんでしょうか? RCカーとモータースポーツの共通点とかあるんでしょうか?
奥本選手:RCカーは上からクルマの動きを見ることができますよね。オーバーステアだったり、アンダーステアだったり、そういった挙動を見てきたおかげで、実際にクルマに乗った場合でも、シートに座った状態でクルマの動きを俯瞰的にイメージできる。挙動に関しては上から見下ろしているような感覚で想像することができますね。
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──おおっ! それはユニークですね。RCカー出身ドライバーならではの視点です。
奥本選手:あとはRCカーも実際のレーシングカーもセットアップは同じなので、リンクしながら考えることができました。
──なるほど。
奥本選手:RCカーの場合、クルマがグリップしているのか、その判断は上から見た目からの情報と指先の感覚だけに頼らなければならないので、圧倒的に情報量が少ないなか、オーバーステアだったりアンダーステアを感じとらないといけない。そういった経験をしてきたからセンサーが磨かれてきたと思います。
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奥本選手:あとは集中力ですね。僕は電動のRCカーだったんですけど、速いクルマになると140km/hぐらい出て、残像のように見えることがあるし、台数も多いのでまばたきができないぐらい大変です。その間、ずっと集中しておかないといけないので、そういった経験はレースでも役に立っています。緊迫した状況でも集中できるようになりました。
──やっぱりRCカーの経験がレースに活かされているんですね。逆にRCカー経験があるがゆえに、実際のレースで苦労したことはありますか?
奥本選手:やはり最初にレースをしたとき、バトルは苦労しましたね。RCカーなら後ろについているクルマの状況を上から見えるけれど、実際のレースではクルマに乗っていると、後ろの状況はルームミラーと左右のミラーでしかチェックすることができない。情報量が少なくて、そこは苦労しました。
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──RCカーとリアルレースの違いにおいて、体力面で苦労したことはないですか?
奥本選手:先ほどもいったように、中学校に入って陸上部に入ったんですけど、その後も大学まで陸上をやっていました。高校生のときは近畿大会で優勝したり、大学でもインターカレッジのリレーのメンバーに入ったりと打ち込んでいたので、レースを始めても体力的には問題ありませんでした。
──ほほう。ちなみに陸上競技もいわばレースのように競争していますが、陸上競技からモータースポーツに生かされていることはありますか?
奥本選手:陸上は足の付け根から動かさないと大きく走れないし、コーナーを曲がるときはゼロカウンターで走っているので、そういった走りかたをすることによって、お尻や背中のセンサーが鍛えられました。そのセンサーはレーシングカーのシートに座っていても役に立っています。カート出身のドライバーはカートの経験で、そういったお尻のセンサーを磨いているようですが、僕はほかの経験で培われてきたと思います。
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以上、簡単に奥本選手に話を聞いてみたが、まさに奥本選手はほかのドライバーにはない「異色の逸材」といえる。残念ながらオートポリス戦で最終スティントを担当した奥本選手は、他車と接触してしまい、その結果、23号車「TKRI松永建設AMG GT3」は3位に惜敗することとなったが、RCカー出身ドライバーとして着実にスキルアップを重ねているだけに、今後も奥本選手の動向に注目したい。