この記事をまとめると
■ミニバンのメリットはキャビンが広いことにある
■2階建てのミニバンを作るとさらに便利に思えるが実際は法規的にも物理的にも難しい
■自動運転が現実のものになれば2階建てミニバンが登場する可能性もある
ミニバンはこれ以上高さを増せない?
軽自動車の主流が、背高のっぽなシルエットのスーパーハイトワゴンになって久しい。上に向かってボディを伸ばすことで広がった室内スペースは、人気を支える理由のひとつとなっている。乗用車カテゴリーにおいても、スライドドアのミニバンは人気だ。脚を余裕で伸ばせる広々とした空間は、高級車の証ともなっている。
いずれにしても、「キャビンが広いことは正義」は乗用車における昨今のトレンドだ。
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そうであれば、乗用車において2階建て構造とすることで、いまより広いスペースを実現できるはず……と考えてしまうのではないだろうか。実際、観光バスなどでは2階建てのモデルも存在している。乗用車で2階建てにすることは現実的なのだろうか、いくつかの条件から考えてみよう。
まず、日本で運用されている2階建てバスについては、全高が3.8m以下となっていることが大半だ。これは、古くからボディサイズの制限とされてきた基準であり、日本の道路インフラを考慮すると、どこでも問題なく走るには全高3.8m以下に抑える必要がある。
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現在は、全高4.1mの車両が通行することを認めた道路も増えてきているが、いわゆるロンドンバスなど海外の2階建てバスは全高が4.1mを超えてしまっていることが多い。そうなると公道を走るには特別な許可がいる。
乗用車の規格における全高制限も無視できない。
軽自動車の場合、全高は2.0m以下という制限があり、5ナンバー(小型乗用車)も同様だ。3ナンバーの乗用車であれば、全高3.8mまでのモデルを作ることは法規的には可能といえる。
ただし、ほかにも考慮すべき法規・ルールは存在している。
車体を傾けたときに転覆しないことを示す基準として「最大安定傾斜角度」がある。乗用車の場合、左右とも35度まで傾けても車両が転がることなく安定していなくてはならない。全長3.8mで、この条件を満たすのは物理的に難しい。ちなみに2階建てバスの最大安定傾斜角度は28度と定められている。
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普通自動車免許で運転できるのは定員10名以下のクルマとなっている点も、2階建て乗用車を作る際のハードルとなるだろう。
7人乗りのミニバンをそのまま高さ方向に伸ばして2階建てボディにしたとすると、単純計算で定員は14名になる。上記のとおり、普通免許で運転できるのは10名以下であるから、定員14名のクルマに大きなニーズが生まれるとは考えづらい。