数少ないディーラーがなくなるどころかブランド撤退のリスクも
数が少ないだけではなく、状況次第では日本市場から撤退してしまうのではないかという不安を抱くひともいる。2016年フォードは日本市場から撤退した。現アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏は「日本ではアメリカ車が走っていない」といっているようだが、そもそもフォード車を買いたくても市場撤退してしまっているのだから買えないという現状もある。
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1990年代前半には魅力的な販売価格もあり、イギリス系となるローバーブランド車がよく売れた。田んぼや畑も散見できる筆者の実家近くのバイバス沿いにもローバーディーラーができ、近所でもローバー車に乗るひとが目立っていた。
ところが2005年、イギリスのMGローバーの経営破綻により、日本の国内法人も日本国内における車両の輸入及び販売業務を2005年に終了した。筆者の実家近くのディーラーはその後、居抜きでアルファロメオやBMWミニのディーラーとコロコロ変わったのち、いまでは建設機械のリース会社のようなものが入っている。
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輸入車になかなか手を出せないでいるひとのなかには、この「ディーラーがすぐなくなる」、あるいは「国内撤退」というリスクを気にするひとも目立つ。ローバーはブランド自体破綻してしまったので、それこそ近所のローバーユーザーも破綻後メンテナンスや修理などで苦労し、すぐに日系モデルに乗り換えたというひとが多かった。
ちなみに、筆者の近所のBMWミニディーラーが閉鎖したあとメンテナンス業務を引き継いだのは、そのエリアから20~30km離れた別資本のBMWミニディーラーであった。
こうなってくると、よほどそのブランドが気に入っているか、クルマが大好きで多少の手間はいとまないというひと以外はなかなか手を出せないし、販売ネットワークが比較的整備されているドイツ系ブランドに輸入車ニーズが集中してしまうというのは妙に説得力を感じてしまう。
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筆者の実家近くには、それまで日系か輸入車かを問わずに新車ディーラーというものがなかった。だからこそローバーブランドディーラーができると、周囲で購入するひとが出てきたのである。
「お気に入りのブランドしか乗らない」、「日本車以外乗らない」というひとがいる一方、「近所に店があれば便利だから日系か輸入車かにはこだわらずにそこから買う」というひともおり、クルマの選び方はまさに千差万別となっている。
良質で性能がよく、実用レベルで申し分のない自国ブランド車が豊富に選ぶことのできる日本市場では、輸入車はほぼ趣味性やブランドバッグなどのようにステイタスを誇るアイテムのようなニーズがメインになってしまう。
輸入車の販売台数を増やすのならば、景気を浮揚し個々の消費者の所得アップを実現し、「とにかくほしい」とか「輸入車に乗ってみようかな」という気もちに消費者を向かわせなければ、輸入車に乗りつづけようという層の固定化をさらに先鋭化させていくことになるだけかもしれない。