この記事をまとめると
■オービスで撮影されて「プライバシーの侵害」と訴えても無駄だ
■最高裁の判決でオービスによる撮影は合法と認められている
■Nシステムは「あくまで」ナンバーのみを撮影しているので問題とはならない
オービスとNシステムはプライバシー権侵害にあたるのか?
クルマで走っていると、道路に設置されたカメラを目にすることがある。そのなかには、各都道府県警察が管轄する「速度違反自動取締装置(オービス)」や、各都道府県警察および警察庁が管轄する「自動車ナンバー自動読取装置(Nシステム)」も含まれている。オービスは速度違反を取り締まるための違反車両を撮影する装置であり、Nシステムは通過するすべての車両のナンバーを自動で読み取って記録しているとされている。
芸能人の場合、無断で撮った写真をSNSに投稿するなどの行為は肖像権の侵害にあたる可能性がある。芸能人にとって「顔」は商売道具のひとつであり、それを使用する際には、許可を得たうえで対価を支払う必要がある。無断で使用すればパブリシティ権の侵害として法的に問題となり得るのだ。
一方、一般人には芸能人のような商業的価値はないものの、本人の同意なく写真を撮影・公開した場合にはプライバシー権の侵害と判断されることがある。
そうだとするならば、オービスやNシステムは、ドライバーや同乗者(主に助手席)の顔写真を許可なく撮影していることになる。これは、プライバシー権の侵害にあたるのではないだろうか。
道路に設置されたオービス画像はこちら
最高裁判決が示すオービスの合法性と3つの条件
とくにオービスの場合、その写真を根拠として速度違反が認定され、反則金や罰金を科されることになる。もし、プライバシー権の侵害が認められれば、「違法な手段による捜査」として違反の成立自体に異議を唱えることも理論上は可能だ。つまり、違反をなかったことにできるかもしれない。
結論からいえば、世のなかはそう甘くはない。もし、そのような主張が本当に通るのであれば、オービスやNシステムはとうの昔に廃止されていたはずだ。むしろ、これらの装置は年々設置箇所が増えているともいわれており、プライバシー権についてどれだけ熱弁をふるったところで、違反が取り消されることはまずない。
オービスに関しては、その取り締まり方法の違法性を訴えた裁判で、すでに最高裁判所の明確な判断が下されている。その判決では憲法に定められた幸福追求権を根拠に、「何人も、本人の承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有する」ことは認められた。しかし、そのうえで、以下の条件が満たされる場合に限り、警察による撮影・記録行為は許容されると判断されたのである。
1)現在において犯罪が進行中の場合
2)緊急に証拠を保全しなければならない場合
3)合理的な方法による撮影の場合
オービスは、上記の条件をクリアしているので違法ではないということになる。今後、この判例が新たな確定判決によって覆されない限り、これが日本における常識として扱われ続けるのだ。