勝手に人の顔撮るとかプライバシーの侵害……こんな理屈は「オービス」「Nシステム」に通用しない? (2/2ページ)

Nシステムが法廷で争点とならない理由

 これに対して、Nシステムは少し事情が違ってくる。同システムは素人目から見ても先の3条件(とくに①「現在において犯罪が進行中の場合」と②「緊急に証拠を保全しなければならない場合」)に、すべて当てはまっているとはいえないと考えられる。ところが、これについては明確な裁判所の判断がない。その理由は、警察が「Nシステムで記録しているのは、表示が義務づけられている(秘匿対象の個人情報ではない)ナンバープレートのみ」としており、ナンバープレートの撮影はプライバシー侵害を疑う要件が満たされないからだ。

 誰が考えても「そんなわけはないだろう」という話だが、Nシステムの詳細な仕組みが公開されていない以上、それを証拠立てるものもない。そもそも、何もしていない一般ドライバーが、Nシステムに撮影されたことによる実害も証明しにくい。

 警察も非常にしたたかで、Nシステムが法廷で争点とならないよう、同システムで記録された映像を裁判の証拠として提出するケースはほとんどない。あくまでも、犯罪捜査のきっかけとして利用されるにとどまっている。

 こういった「どこまでがプライバシーなのか」といった問題は、普及が進むドライブレコーダーや私的な防犯カメラ、さらには警察官が装着するボディカメラなどにおいても、同様の課題を抱えることになるだろう。大げさなことをいえば、軍事衛星も同じことだ。

 新しい便利な技術が次々と登場する現代において、公共の利益と個人の権利のバランスをどう取るか──それは非常に難しい問題である。


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