アノ当時のままの姿の新車があれば買うのに……よく聞く声はムリな相談! クルマの姿形が変化するには納得の理由があった

この記事をまとめると

■昔のデザインのままのクルマをほしいと思う人は多いがそれは難しい問題だ

■クルマは環境や安全といった社会的な要求に応じてサイズが拡大してきた

■昔のようなクルマがほしければ多少の苦労はあっても昔のクルマに乗るのがベストだ

現代の基準を満たすには昔のクルマはあまりにも小さすぎだった

 昔のままのデザインのクルマを出せばすぐに買うのに。こう思っている人は多いのかもしれない。僕もたまに仕事で旧いクルマに触れて、いいなと思うことはある。でも現実には、それを新車で売ってほしいとは思わない。ミニやポルシェ911の変遷を見れば、難しい相談だと理解できるからだ。

 両車とも名前は昔と変わらない。しかしボディサイズはかなり拡大し、デザインもヘッドライトがスラントしたり、バンパーがボディと一体化したりして、インテリアではメーターがデジタル化した。

 このような進化を遂げた理由として、まず環境や安全といった社会的な要求がある。ボディサイズの拡大は衝突安全性、高速での操縦安定性、キャビンの安全性や快適性が絡んでいるし、凹凸が少ないデザインは安全性のほか、空気抵抗を減らして環境性能を高める目的もある。

 さらにユーザーの、より速く、より楽にという思いに応えた結果、ボディもエンジンも大きくなってきた。キャビンでいえば、単なる広さだけでなく、エアバッグなどの安全装備、エアコンに代表される快適装備を収めるスペースも必要だ。

 一方でメーカーは、新車が売れなければビジネスとして成立しない。モデルチェンジしなかったら、いつ買っても同じになるので、1台でも多く売れるよう、デザインやメカニズムを少しずつ変えてユーザーにアピールすることが大事だ。

 とりわけ最近のユーザーは、燃費の数値や安全装備を重視する人が多い。ライバルより劣っていては顧客を逃してしまう可能性もあるので、サイズやデザインを変えてもこれらの面で優位に立とうとしているようだ。

 なかには長年基本設計を変えていないクルマもある。トヨタのランドクルーザー70はそのひとつ。ただしデビュー当時は現行の5ドアボディはなかったし、乗用車登録は現行型が初めてだ。バンパーの材質は鉄から樹脂に変わり、エンジンルームの拡大に合わせてフロントフェンダーはかなり広がっている。

 それに比べれば、運転席まわりの空間は昔のまま。でも当初は4ナンバー枠に収まっていたので左右方向はかなりタイトだし、エアコンはマニュアル式だ。「それでいい」と思う人もいるだろうが、3ナンバーボディやオートエアコンに慣れた多くのユーザーは不満に思うはずだ。

 似たようなキャラクターのメルセデス・ベンツGクラスはそのあたりを対策していて、見た目は昔のままに見えるが、全幅は大幅に拡大しており、インテリアにはデジタルディスプレイが導入されている。ミニや911に通じる進化だ。

 クルマは公道を自由に走ることができるからこそ、社会の要求に合わせていかなければいけないし、多くのユーザーからはより快適に、より経済的にという希望がある。それにメーカーとしてはビジネスも考える必要がある。

 昔のようなクルマがほしければ、多少の苦労はあっても昔のクルマに乗るのがベスト。オリジナルの手応えは何物にも代えがたいと、新旧さまざまなクルマに接してきた僕は思っている。


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森口将之 MORIGUCHI MASAYUKI

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