いま軽自動車EVは成功してるのに……それでも世界初の量産EV「三菱i-MiEV」が売れなかったワケ

この記事をまとめると

■2009年に三菱から初の軽EVとなるi-MiEVが登場した

■実質負担額が200万円を切ったこともあるリーズナブルで意欲的な1台だった

■複合要因で不振となってしまった時代を先取りしすぎたモデルといえる

じつはリーフより先だった国産電気自動車

 2009年、リチウムイオン二次電池を用いた世界初の量産電気自動車として登場したのが、三菱のアイミーブだった。バッテリー容量は16kWhで、JC08モードによる航続距離は120km。エアコンを使用すると約100km、ヒーターを使うと約80kmと公表されていた。2009年は法人向けの販売でスタートしたのだが、発売当初の車両本体価格は税込459万9000円。EV補助金を差し引くと、実質320万9000円だった。

 ここでは、一般ユーザー向けのアイミーブについてのみ話を進める。個人向けの販売は2010年からで、車両本体価格は398万円に引き下げられ、EV補助金によって実質負担額は284万円となった。2011年にも価格引き下げが行われ、ベースグレードのMが260万円、上級グレードのGで380万円となり、実質負担額はMで188万円に。一気に身近なEVとなったのである。

 アイミーブの大きな転機は2018年。道路運送車両の保安基準改正に適合すべく、バンパー形状を一新。全長が85mm伸び、軽自動車規格を超えたことで、登録車扱いになっている。もっとも、車両パッケージは軽自動車規格のままだから、乗車定員は4名のままである。

 そんなアイミーブは、フランスのプジョーやシトロエンにOEM供給され、プジョーiON、シトロエンC-Zeroとして発売されていた経緯もある。世界初の量産EVであり、海外でも活躍していたことから、売れ行きはなかなかのもの……とはいかなかった。

 初期型が官公庁で採用され、郵便車などに使われていたのを覚えている人もいるはずだが、個人向けとしては決してヒット作とは言えなかったのも事実。実際、2017年時点で国内販売台数は153台でしかなく、2021年3月に約12年の時を経て、生産終了となっている。ただし、2023年には軽商用車のEV、ミニキャブEVを登場させ、現在も販売が継続されている。

 では、2010年に発売された個人向けのアイミーブはどうしてブレイクしなかったのだろうか。その理由をいくつか挙げてみると、以下のようになるだろう。

 まず、軽自動車として高価な価格(これは致し方ないところだが)。当時の充電インフラ不足。航続距離の短さ。そして、2008年のリーマンショックによる景気低迷。2011年の東日本大震災による消費の冷え込み。2010年に登場した24kWhバッテリー搭載、航続距離200kmの日産リーフの存在も挙げられるだろう。

 もっとも、いまの三菱にはekクロスEVがある。こちらは感動に値する乗り心地のよさと最高速度130km/h、航続距離180km(WLTCモード)に、軽自動車にしてコンパクトカーを超えた大トルクによる加速性能を備えた軽EVとして、一定の人気を得ている。

 やはり、一般ユーザーには短すぎた航続距離、充電インフラを含め早すぎた登場と、世界情勢、震災といった複数のネガティブファクターが重なったことが、12年間の販売で累計販売台数約2万3000台にとどまった理由のようだ。2022年にekクロスEVが発売されたタイミングに最新型アイミーブが存在していれば、話は変わったかもしれない……。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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