この記事をまとめると
■バブル経済期以降からクーラーは当たり前の装備となった
■窓がなく保冷の難しい車両はいまもクーラーレスが一般的
■スポットクーラーの導入で作業環境は大きく改善された
いまだクーラーレスの現場も多い
半世紀前、新車にクーラーが装備されていないクルマは珍しくなかった。そのため、多くのドライバーがカー用品店などであと付けクーラーを購入し、取り付けていたという。
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現在では新車にクーラーが搭載されているのは当たり前だが、標準装備として普及し始めたのはバブル経済期以降である。いまではトラックなどの商用車を含め、クーラー非搭載の車両を見かけることはほとんどなくなった。
とはいえ、現在でもゴルフカートのように窓のない車両は保冷が難しいため、クーラーを装着していない場合がほとんどだ。最近では自動運転レベル2の実証実験やグリーンスローモビリティなどで活躍する車両のなかに、ゴルフカートをベースとしたものが多く見られる。これらの車両はサイドに窓を設けていないケースが多く、あっても雨よけ用のビニールカバー程度。もちろんクーラーはなく、搭載されているのはせいぜい扇風機が数台といったところだ。
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倉庫内で活躍するフォークリフトもコクピット周辺に窓はなく、多くは安全ガードの支柱があるだけだ。街中で風を受けながら走るグリーンスローモビリティとは異なり、蒸し暑い倉庫内で前進と後退を繰り返す作業環境は、決して快適とはいえない。
さらに、「物流の2024年問題」にともない、フォークリフトオペレーターの人手不足が深刻化するなか、少しでも作業環境を改善することは避けられない課題といえるだろう。
フォークリフトにスポットクーラーを取り付けてダイレクトに冷却
とはいえオープン空間であるフォークリフトのコクピットにクーラーを設置するのは、「屏風の虎を縛る」ようなもの。常識的に考えれば実現はほぼ不可能だ。しかし、自動車業界にはオープン空間でクーラーを効かせている前例が存在する。それが、整備・点検・取り付け作業場で活躍するスポットクーラーである。
スポットクーラーを取り付けたフォークリフト画像はこちら
スポットクーラーは熱交換器が一体型になった可搬式クーラーで、いわゆるウインドウ型クーラーのような構造をもつ。蛇腹式の吹き出し口から冷気を送ることができ、コンパクト化してフォークリフトの前部や天井部に取り付ければ、コクピットへ直接冷気を届けられる。吹き出し口をオペレーターの正面や上方に向ければ涼しい風をダイレクトに受けられるため、体感温度を大きく下げる効果が期待できる。
熱風を発生させない気加熱冷却タイプは環境にも優しい
最新型には排気熱風を出さない気化熱冷却タイプも登場している。従来のクーラーはコンプレッサーで冷媒を圧縮・膨張させるため、冷風と同時に熱風も発生する。これではオペレーターは涼しくても、周囲には熱風が撒き散らされてしまう。一方、気化冷却タイプなら熱風が出ないうえ、冷媒にフロン系ガスを使わないため環境にも優しい。
ブラザーエンタープライズの産業車両用フロンレススポットクーラー画像はこちら
近年の酷暑は深刻で、夏季には熱中症による救急搬送が相次いでいる。エアコンのない倉庫はまさに蒸し風呂で、フォークリフトオペレーターにはベスト型空調服が必須とされるほど。こうしたクーラーが導入されれば作業環境は大きく改善できるだろう。一日も早くすべての現場で採用されることを願っている。