予想外の人気だろうが生産能力が少なかろうが「納期遅延」はダメ! 新車の納期遅延や受注停止が常態化しているワケ (2/2ページ)

納期遅延が日本車離れを加速させた

 納期が長期化する発端となったのは、2009年5月に発売された3代目トヨタ・プリウスだ。同じ2009年の2月に、2代目ホンダ・インサイトが売れ筋グレードのGを189万円に抑えて発売され、3代目プリウスはこれに刺激を受けた。

 3代目プリウスは、3ナンバーサイズのボディに高機能なストロングハイブリッドを搭載しながら、Lの価格を205万円、売れ筋のSを220万円に抑えて買い得度を強調した。さらに2代目の取り扱いディーラーはトヨタ店とトヨペット店だったが、3代目はネッツ店とカローラ店を加えた全店扱いになり、販売店舗数を2倍以上の約5000店舗まで増やした。

 さらに3代目プリウスでは、当時では珍しく予約受注期間が長かった。発売は2009年5月18日だが、予約受注は4月初旬に開始した。しかも、「打倒! インサイト」とばかり予約受注に力を入れたから、6月17日の時点で受注台数が18万台に達している。

 納期も約10カ月に遅延してユーザーに迷惑をかけたが、報道のされ方は「新型プリウスは大人気」「行列のできるプリウス」というもので、ほかのメーカーも「こういう売り方をしてもイイんだ」とばかり同調した。

 たとえば初代スバル・レヴォーグでは、納車を伴う発売の開始は2014年6月だったが、予約受注は2014年1月ごろに開始している。当時、販売店からは「簡素な資料だけで、半年も先に発売されるクルマの予約受注をいただくのは辛い」という話が聞かれた。

 予約受注の前倒しをすると、売れ筋のグレードやオプション装備があらかじめわかる。メーカーは需要予測を見誤りにくく、生産開始時には多量の受注を抱えているから、迅速に納車を開始できて生産/納車効率が高い。メーカーにとって都合がいいが、実車のない状態で商談をするユーザーと販売店は困る。

 最近の自動車業界は、メーカーの生産効率を重視した結果、日本のユーザーから離れつつある。その結果として、納期が遅延して売れ行きも低迷している。


この記事の画像ギャラリー

渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
-

新着情報