プロパイロットが選べないグレードがあるワケは? ハイウェイスターがおとなしくなった理由は? 日産新型ルークスの開発者に全部聞いた (2/3ページ)

ユーザーからのニーズに合わせて機能と走りを煮詰めた

──逆に気になったのは、「プロパイロット」が「ハイウェイスター」でしか選べないことです。ほかのメーカー、とくにホンダさんはN-BOXに「ホンダセンシング」を全車標準化しているので、そこをあえて全車標準装備にしなかった理由は?

水上さん:弊社としては自動運転にかなり力を入れていますので、なるべく増やしたいという想いはあるのですが、実際の軽自動車ユーザーの使われかたを見ると、1台でなるべくいい軽自動車を購入したいお客さまと、なるべく安価なものを毎日の足としてお乗りになるお客さまに、二極化しているんですね。標準車は後者のお客さまのニーズに応えるものにしたかった、というのが大きいですね。

 ETCカードをもっていない、ナビもいらない、毎日知った道しか走らない、というお客さまもいらっしゃるわけです。そこは悩ましい判断ではありましたが、標準車は価格とカジュアルさを優先しました。

 では標準車のお客さまがクルマにまったくお金をかけないかというとそうではなく、使いかたの違いですね。我々も関東にいるとなかなか気づかないことが多いんですが、複数台所有のお客さまが本当に多いので、そこに200万円を超える、300万円近くになる価格の軽自動車よりは、購入しやすい軽自動車へのニーズがあると思っています。

──地方に行けば行くほどひとり1台の世界になるので、その1台1台にお金をかけられないですよね。

水上さん:全部トップグレードにはしないだろうと思います。その一方で、独身の方などは1台所有で、自分のクルマとして愛着がある、だからいいものがほしい、気に入ったデザインなら多少高くとも購入したい、というお客さまもいらっしゃいますね。所有台数によって傾向は違う気がします。

──基本的なメカニズムは先代からキャリーオーバーしていると思いますが、詳細が明かされていない部分、たとえばボディなどの変更点はありますか?

遠藤さん:プラットフォームは基本的に先代ルークスからの流用ですが、軽量化に関しては、足まわりではフロントのナックルアームをアルミ製にしました。スタビライザーも先代の中実タイプより径の太い中空タイプにして、剛性を上げつつ軽量化を達成しています。

 ボディに関しては、高張力鋼板の使用比率を高めていますが、それは上屋が中心で、フロアパネルは同じものを踏襲しています。

 新型ルークスでは最高1.2GPaまでですが、サクラは重いバッテリーを抱えているうえで衝突基準に対応させる必要がありますので、1.5GPaまで使っていますね。

──足まわりのセッティングは、デリカミニの4WD車以外は同じと考えてよろしいのでしょうか?

遠藤さん:標準車は共通です。三菱さん独自の車両についてはお答えできませんが……。

──先代はデリカミニの4WD車だけ飛び抜けて走りの完成度が高く、ほかの仕様は日産さんご自身が説明されていたように、硬い乗り味だったと感じています。それが新型では、どの仕様に乗ってもしなやかな乗り心地になっていました。

遠藤さん:今回はブッシュの最適化に加え「高応答ショックアブソーバー」を採用していますので、その違いが大きいと思います。ブッシュはリヤまわりを20%柔らかくしています。

 先代は日産としてしっかり感を出そうとしましたが、このセグメントは他社がかなりソフトめに振っている実情もありますので、我々としてはしっかり操舵できる範囲内で最適化を図っています。

──おっしゃるとおり、ステアリングのレスポンスは意外とよく、この手のクルマでよくあるトラック的な運転感覚にはなっていないと感じました。

遠藤さん:日産としては、柔らかいセッティングだと緊急回避が難しくなりますので、そのための作り込みを先代からしていますね。

──フロントスタビライザーを固めたのは、そういう要件からでしょうか?

遠藤さん:そうですね。それからリヤは、シートを生地とクッションを含めてよくしています。後席はお子さまが乗られるということで小ぶりだったんですが、試乗からは「腰が浮く」という声もあったので、新型では大人の方も安心して乗られるようにしました。

──パワートレインに関して、エンジン自体の変更点は?

遠藤さん:エンジン本体は一緒のタイプですね。ただ、燃費改良はいくつか盛り込んでいて、フローシャットバルブというエンジンがより早く暖まるものや、クールドEGRという燃焼温度を下げる機構を採用しています。


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遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
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