圧倒的なダウンフォースを得る代わりにそれなりの対価も
F1では1977年に活躍したロータス78がグランドエフェクトカーのパイオニアで、その効果を目の当たりにしたライバルチームも次々に採用。
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しかし、サイドスカートが破損すると、ダウンフォースが失われたり、スピンをして車体が進行方向と逆向きになると、正常時とは反対にリフトフォースが発生して車体が舞い上がったり、コントロールが利かなくなって大事故につながりやすいという問題もあり、F1では1983年からフラットボトム規定が導入され、事実上、グランドエフェクトカーは禁止されてきた(グループCカーなど、プロトタイプカーやインディーカーでは、その後もグランドエフェクトを利用していた)。
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しかし、グランドエフェクトを禁じたまま空力の開発が進んだ結果、前走車が作り出すダーティエアが悪さをして、ライバル車と接近して走るとダウンフォースが大きく失われることになり、接近したバトルがほとんど見られなくなってしまった。
2021年の時点では、前後のマシンの間隔が1車身(約0.5秒差)以内に近づくと、後続車は約45%のダウンフォースを失う状況で、オーバーテイクシーンがないどころか、接近戦を見る機会すら珍しくなってしまった……。
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レーシングカーを速くするためには大きなダウンフォースが欠かせないが、エキサイティングなレースを展開するには、ダーティエアを減らして接近戦を可能としなければならない。
そう考えたF1首脳陣は、2022年から40年ぶりにグランドエフェクトを解禁(当初、グランドエフェクトカーなら前のクルマに1車身まで近づいても、ダウンフォースは15%しか失われないとされた)。
その代わり、速度や加減速、路面の凹凸などの影響で、フロア下で発生するダウンフォース量が変化し、マシン自体が上下動を繰り返してしまうポーポイズ現象に各チームが悩まされることにもなったが、その対応力がチームに問われたため、技術競争という面白味も増した。
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F1の面白さは、こういうところにもあるので、空力をはじめパワーユニットなど、テクニカルレギュレーションが大きく変わる2026シーズンは、勢力図が予想しづらく、また楽しい1年になりそうだ。