レース参戦で思わぬ効果も
──なるほど。たしかデビューイヤーの2017年はマザーシャーシのマークXで参戦したんですよね?
青柳室長:スーパー耐久のときからそうだんたんですけど、ディーラーチームとして活動している以上、自分たちの販売店で扱っているクルマをレースカーとしても選んでいきたい、というところがありました。スーパー耐久もトヨタ86ではじまって、そのあとにマークXやクラウンRSでレースに参戦。まわりからは「珍しいクルマだね」といわれたんですけど、トヨペット店の基幹車種というか顔になるクルマをレースで使いたいという思いがありました。スーパーGTに参戦する際も、FIA-GT3を買ってきて走らせるのであればかなり楽だったんですけど、自分たちの取り扱い車両で戦いたいということもあって、マークXにしました。
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──前例がないだけに苦労しましたよね?
青柳室長:自分たちで作ったクルマでレースをしたいということもスーパー耐久のときからの大義名分なので、マザーシャーシを用意して、マークXのエクステリアに仕上げていきました。まわりからは「なにを考えているんだ」といわれましたし、正直、苦労しました。結果としても速くはなかったんですけど、でも話題性もあったし、「埼玉トヨペットはほかとは違うよね」という見られかたをするようになったので、よくも悪くも個性という部分では注目を集められたと思います。
──広報的にはマークXで参戦したことは正解でしたよね。でも、スーパー耐久のときから、マークXやクラウンRSなど、ちょっと変わったクルマで戦ってきたので、そういった経験はスーパーGTでも活きていますよね?
青柳室長:相当に活かされていますね。スーパー耐久では86にしてもマークXやクラウンRSにしてもホワイトボディから作ってきていますし、レギュレーションのなかで、どこをどうすれば軽量化できるのか、といったことを考えながら作ってきましたからね。苦労したぶん、メカニックたちの技量のレベルは上がってきています。
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──人材育成の成果が現れていますね。
青柳室長:そうですね。とはいえ、販売店の現場レベルで、その技術が必要かというと難しい部分ではあると思いますけど、メカニックたちの技術はかなり高いと思います。やはりレース活動がメカニックたちにとっていい教材になっているんだと思います。
──ちなみに、スーパーGTと同時にスーパー耐久にも参戦していますが、チームのメンバーは同じなんでしょうか?
青柳室長:監督とエンジニアは共通ですが、メカニックはわかれていて、それぞれのクルマの整備を行っています。
──スーパーGTは国内最大級の人気を誇るカテゴリーですが、GT300クラスに参戦することによって、埼玉Green Braveのファンも増えてきたんでしょうか?
青柳室長:人数を数えているわけではないので正確にはわかりませんが、スーパーGTに参戦したことでかなり増えたと思います。ディーラーチームはファンとの距離感がかなり近い存在で、ずっと応援してくれている方はチームスタッフとも仲よくなっています。それに、私たちは埼玉県のチームで、地元から愛されているチームを目指していることもあって、町内会主催の夏祭りとか、埼玉県とコラボして県民の日に行うお祭りにはクルマをもって行っているんですけど、そういったイベントに積極的に出ることで地元の子どもたちからも応援してもらえるようになってきました。「スーパーGTを見に行きます」と声をかけたりしてくれるようになってきたので、埼玉県でもレースをやっているディーラーということが認知されてきたと思いますね。
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──サーキット以外のイベントでも活動しているんですね?
青柳室長:そういったイベントに参加して認知してもらうことで、整備を勉強している学生たちに埼玉トヨペットに興味をもってもらいたい。リクルートにも繋げたいので、埼玉県内にある整備士の専門学校のオープンキャンパスにクルマをもって行ったりしていますし、工場見学をしたいという要望があれば対応しています。レーシングチームとして考えたら、そんな必要はないのかもしれませんが、埼玉トヨペットというディーラーとして考えたときは、地域と密着した活動は必要なので、社会貢献、地域貢献を行いながら、ファン作りをしていきたいと思います。
──レース活動はメカニックの育成に効果を現しているようですが、ファン作りでも効果を発揮していますね。
青柳室長:そうですね。ファン作りという部分でも効果は徐々に出てきていますし、リクルートという部分でも、やはりスーパーGTに出ているチームということで、かなり見られかたも変わってきました。クルマの好きな専門学校生にとっては、スーパーGTに参戦している埼玉トヨペットとうことで、スーパー耐久だけに参戦していたときよりも、かなり関心をもってもらえるようになりましたので、リクルートでも高い成果が出ています。
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──スーパー耐久に続いてスーパーGTでも2023年にGT300クラスで2冠を達成されましたが、ディーラーチームとしてこれからの目標はなんですか?
青柳室長:GT500クラスにしても、スーパーフォーミュラにしても、正直、この先にステップアップしていくことは考えていません。いずれにしてもGT300のなかでどう結果を残していくのか? 同時にレース結果も大事ですが、社員メカニックを使って、いかに育てていくのかもディーラーチームとしては意義のある部分なので、このスタンスは続けていくと思います。
このように、ディーラーチームにとってスーパーGTへの参戦はかなりハードなチャレンジで、かなりの苦労を強いられているようだが、その一方で、人材育成やファン作り、リクルートの部分で効果を発揮。前述のとおり、3つのディーラーチームはパフォーマンスが高く上位争いを左右しているだけに、我々クルマ好きにとってももっとも身近なチームのひとつとして注目したい。