この記事をまとめると
■物理スイッチはブラインド操作が可能で安全性が高く直感的に使いやすい
■タッチ式はOTAで新機能追加が容易でコスト削減にもつながるが操作ミスや慣れが必要
■最適解は物理・タッチ・音声認識を用途に応じて使いわけるハイブリッド方式だろう
タッチ式スイッチの増加には理由がある
ステアリングの奥にメーターがない、テスラやボルボEX30のようなクルマも出てきた現代では、いわゆるハードの物理スイッチが減ってきている。フォルクスワーゲン・ゴルフも7代目までは基本すべてが物理スイッチだったのだが、8代目からは、たとえばオーディオのボリュームやエアコンの温度設定がタッチスライダー式にかわり、しかも夜間の照明がないことから酷評を浴びていた。なおこれはマイナーチェンジモデルの8.5で改良され、夜間照明がついた。
タッチスライダ式となった8代目ゴルフの音量/エアコン温度調整画像はこちら
電気自動車のボルボEX30を例に挙げれば、ステアリング奥にメーターがない代わりにスピードメーターがセンターディスプレイのなかに表示され、なんとドアミラーの調整まで、センターディスプレイの中のタッチスイッチ(左右切り替え)とステアリングスイッチ(ミラーの方向)の2段階で行う手間が必要になっている。ドライブモードの切り替えなどもしかりだ。
ボルボEX30のミラー調整方法画像はこちら
EX30の場合、さすがにハザードスイッチはディスプレイ内のタッチ式スイッチとルーフにある物理スイッチが併用され、パワーウインドウスイッチも物理スイッチとして残されているのだが、ディスプレイ内の操作は取説をよく読まなければ、オーナーでも100%使いこなすことは簡単ではなく慣れが必要だし、レンタカーや友人のクルマとして借りた際などは、もしかするとドアミラー調整さえできずに途方に暮れるかもしれない。もちろん、インテリアの運転席まわりがすっきりするというメリットはあるのだが……。
そのように、最新のクルマの物理スイッチが減少傾向にあるわけだが、それには理由がある。それはクルマの多機能化とOTAだ。クルマの機能が時代の要請で増えてくると、物理スイッチに頼っていたのでは運転席まわりがスイッチだらけになってしまい使いにくい。コストダウンの時代ゆえ、ハードスイッチ採用によってコストも膨らむから、自動車メーカーとしては、操作性はともかく物理スイッチの多用は避けたいところなのだ。
ボルボEX30のインテリア画像はこちら
そしてOTAだ。これは、無線技術を用いてソフトウェアのアップデートや新機能の追加を可能にするものだが、新機能の追加などは物理スイッチでは対応できない。ディスプレイ内のタッチスイッチであれば、OTA通信によって、それこそ新たなスイッチのアイコンを追加することも容易というわけだ。当然、先進運転支援機能もアップデートすることができ、長期に渡って最新の機能を使えるのだから、ユーザーメリットは絶大といっていい。あわせて、物理スイッチを極力なくすことで、自動車メーカーとしてもコストダウンが計れ、双方にメリットをもたらしてくれる。