走りも犠牲にしない新世代のオールシーズンタイヤ
そしてウェットハンドリング路では、フォルクスワーゲン ゴルフeTSIを使ってCC3 SPORTと、先代モデルであるCC2を乗り比べた。タイヤサイズはそれぞれ225/40R18だ。
この比較は、とてもわかりやすく、かつ興味深かった。
CC2のコンタクトフィールはもっちりとしていて、ウェット路面への密着感が高く操縦していて安心感がある。しかしその旋回速度を上げて行くと、とくに横方向でトレッドが若干倒れ込むような応答遅れが起こって、アンダーステアが強くなって行く。
ミシュラン・クロスクライメート3 SPORTの試乗イメージ画像はこちら
対してCC3 SPORTは走り出しからカチッとした乗り味で、操舵時のレスポンスもリニアだから、ライントレース性が高い。さらに追い込んだ状況でもトレッド面が踏ん張り、一定した弱アンダーステアを保ちやすい。単にスポーティな走りができるようになったというだけでなく、ウェット路面における性能も引き上げられた印象だ。
このことからわかるのは、225/40R18サイズを履くクルマに対してミシュランが、CC3ではなくCC3 SPORTを推したということだ。
そんなCC3 SPORTの進化点は、大きくわけてふたつ。コンパウンド的には、オールシーズンタイヤ専用の「サーマル アダプティブ コンパウンド2.0」が投入された。
これは雪上性能を維持したままドライ/ウェット性能を向上できる、オールシーズンタイヤ専用のトレッドコンパウンドだという。
ミシュラン・クロスクライメート3 SPORT画像はこちら
また構造には、パイロットスポーツ シリーズに採用される「ダイナミック レスポンス テクノロジー」を搭載した。アラミドとナイロンを組み合わせたハイブリッドキャッププライによってタイヤの剛性が高まり、操舵応答性がよくなったというわけだ。
ちなみにテストドライバーのドライブでは、このウェットハンドリング路でのラップタイムを、CC2から約2.4%向上させたという(※車輌はトヨタ86 タイヤサイズは225/40R18)。
最後は外周路を使って、CC3の乗り心地や静粛性を確認した。テスト車両はウェットブレーキングのときと同じカローラ ツーリングだ。
ミシュラン・クロスクライメート3 SPORTの試乗イメージ画像はこちら
今回のテストでは初のドライ路面となったが、CC3の乗り味はかなりソフトだった。コンパウンドだけでなくケースとともにバランスが揃ったもっちり感で、CC2のキャラクターが、そのまま受け継がれていると感じた。
正直なことを言うとそのハンドリングレスポンスには、やや鈍さを感じた。コースは時速50km/hのスラロームから始まり、80km/hでのバンク、80km/hでのダブルレーンチェンジ、そして100km/hでの高速バンクから再び80km/hへと減速して、人工的な段差を通過する。
ノーマルタイヤとの比較をしたわけではないので個人的な印象になってしまうが、夏タイヤとして考えればスラロームでの応答性は切り始めの反応が鈍く、その分早めに操舵を開始してやらねばならない。荷重が掛かった状態ではきちんとグリップ感が引き出されてロールも安定するが、さらに再び切り返しを繰り返す場面では、やや操作に丁寧さが求められる。
ミシュラン・クロスクライメート3 SPORTの試乗イメージ画像はこちら
同様にバンクでは早めにゆっくりと操舵して、ターンインで接地面のムービングを落ち着かせてやる必要がある。80km/hからのダブルレーンチェンジも、最初の操舵をスムーズに決めないと、レーンチェンジ後に揺り返しが若干起きる。
個人的にはすべてのモデルが”CC3 SPORT”でもよいのではないか? と思うが、そこにはコストの兼ね合いや、そこまで正確な操舵応答性をユーザーが求めていないという実情もあるのだろう。その実、筆者もCC2を使っていたが、日常においては極めて乗り心地がよく、初期レスポンスの穏やかさを承知していれば、かなりスポーティな走りもできるタイヤだった。
ミシュラン・クロスクライメート3 SPORTの試乗イメージ画像はこちら
そしてこれはCC2での経験だが、こうした路面に対する穏やかな密着性があるからこそ、雪上を走ったとき、スタッドレスタイヤにも匹敵するグリップ感(すなわち安心感)が得られているのだと思う。
そういう意味では来季に予定されるであろう、雪上テストが楽しみだ。
対して感心したのはこうしたしなやかさを持ちながらも、ロードノイズがきちんと抑えられていたこと。これはブロックを細分化して最適な配置とした「ピアノアコースティックテクノロジー」の効果で、不快な周波数帯の音が抑えられているのだという。
ミシュラン・クロスクライメート3画像はこちら
またコース終盤には連続する段差が用意されていたが、その上を通過してもCC3はこの入力を優しく吸収・ダンピングしていた。
とはいえテストコースは概ねフラットな路面だから、リアルワールドで走らせるまでは褒めすぎないようにしよう。CC2の経験則から言えばその静粛性は十分普段遣いに耐えうるものだったから、一般公道での試乗に期待だ。
総じて第3世代へと進化を果たしたCC3は、ミシュランらしい律儀さでクロスクライメート2を正常進化させたタイヤだ。そのうえでよりスポーティな動力性能やハンドリングを持つプレミアムカーやスポーツカーユーザーに、CC3 SPORTが設定されたのは、朗報だと言えるだろう。