【試乗】アシモ魂が投入された椅子型クルマ! 歩行者に溶け込めるホンダ「UNI-ONE」がついに発売開始!! (2/2ページ)

直感的な操作でスムースに移動できる

 シートは背もたれのない椅子のような形状で、アームレストもありません。着席したらまず腰ベルトを締めます。

 そこで目に留まったのが、膝下あたりに備えられたもうひとつのベルトです。担当者によれば、これは下肢麻痺の方が利用する際、車輪の動きに合わせて足が振られてしまうのを防ぐためのもの。また、小さなお子さんで足が床につかない場合にも、安全確保のために使用するそうです。

 準備が整ったら、横に設置されたスマートフォンのような縦型液晶を操作。アイコンを上にスワイプすると補助輪が浮き上がり、車高の高いハイポジションに切り替わります。車高はローポジションとハイポジションの2段階から選択可能で、高い位置では周囲を見渡せる視界を確保できるうえ、人混みのなかでも埋もれずに移動できるのが大きなメリットです。

 走行は直感的でシンプル。骨盤を立てて姿勢を伸ばすとその場で停止し、行きたい方向へ体を少し傾けると前進します。速度は人がゆっくり歩く程度で、不安感もありません。あまり意識せずとも目線を向けた方向へ自然と進んでいくのが印象的でした。

 さらに、片側に体重を傾ければその場で回転も可能。ほんのわずかな身体の動きに敏感に反応し、スムースに応えてくれる操作性に驚かされました。

 続いて、坂道走行も体験しました。UNI-ONEは、人が坂道を歩くように常にまっすぐ姿勢を保ちながら移動します。登りはスーッと力強く上がり、下りは安定した速度で降下。傾斜のなかでも姿勢が崩れることなく、まるで人が自然に歩いているかのようにバランスを取りながら進んでいくのが印象的でした。

 最大で10度の勾配まで対応可能で、自動で速度を制御してくれるため安心感があります。さらに、坂道途中での停止や方向転換も問題なく行えました。

 UNI-ONEはまず法人向けに展開されます。販売予定は5年間で1000台を目標としていますが、台数よりも「長く安心して使ってもらうこと」を重視。長期契約(3年・6年)と短期契約が用意されており、本体に加え交換式バッテリーや充電器、定期点検、オンサイト修理、コールセンター、保険、運用管理システムまで含めたサービス体系となっています。すでに10社が導入を決定しており、今後も拡大が見込まれます。

 具体例としては、大分県日出町の屋外型テーマパーク「サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド」が挙げられます。同施設では10台を導入予定で、すでにスタッフ用に2台を先行で試験運用。広い敷地内の移動が格段に楽になったと好評を得ているとのこと。残る8台は来場者用として活用される予定で、スムースな運用に向け予約サービスの導入も検討中。サンリオの理念である「みんな仲よく」を、より多様な来場者に寄り添う形で実現する一助となりそうです。

 将来的には2028〜2029年にかけて拡大が見込まれるスマートシティとの親和性も高く、需要増加が予想されています。さらに、AR技術との連携も進んでおり、すでに「水中探検」をテーマにしたAR体験や、「モビリティリゾートもてぎ」の森林散策を疑似体験できるARプログラムが用意されています。単なる移動にとどめず、エンターテインメントや学びと融合させる新たな可能性も広がっています。

 UNI-ONEは、人を支える「ポニー」のようなロボットをつくりたいという思いから誕生し、人とともに暮らせる存在として開発されました。ハンドル操作も免許も不要で、体重移動による直感的なコントロールは、多くの人に新しい移動の自由をもたらします。アシモの開発で培われた技術が生活の中に溶け込み、テーマパークや街、そしてスマートシティへと広がっていく未来を思い描くと、その可能性の大きさを改めて実感します。

 これからさまざまな場面で活躍し、人とモビリティの関係をより自然で豊かなものへと進化させていくことでしょう。


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黒木美珠 KUROKI MIJYU

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